「個人目標を立ててください」と言われたとき、「何を書けばいいのか分からない……」と戸惑った経験はありませんか?
飲食店の店長として日々忙しく現場を回す中で、「目標」と聞くとつい「売上を伸ばす」といったざっくりした表現で済ませてしまいがちです。
しかし個人目標は単なる提出物ではなく、自分自身のスキルアップやチームを成長させるために重要な指標となります。
評価に直結するだけでなくスタッフとの信頼関係を深め、チーム全体のモチベーション向上にもつながるので、しっかりとした目標設定をする必要があります。
店長というポジションだからこそ果たすべき役割があり、それを明確にすることが店づくりやキャリアアップへの第一歩となります。
本記事では飲食店店長に求められる5つのスキルや目標の立て方、実際の目標例やNGパターンまでを解説します。
今後の業務や評価、将来のキャリア形成にも役立つ情報をお届けします。
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飲食店店長の役割と目標設定が必要な理由
飲食店店長の個人目標を考えるために、まずは店長に求められることはどのようなことがあるのか確認しましょう。
それを考慮して目標設定することで、より目標に深みが増します。
さらに目標をたてるメリットも理解することで、目標を重要視できるでしょう。
ここでは以下の内容を詳しく説明します。
- 飲食店店長に求められる5つのスキル
- 目標を立てるメリット
飲食店店長に求められる5つのスキル
飲食店店長は、ただ現場をまわすリーダーではありません。
店舗全体の運営を担う「マネージャー」として以下の5つのスキルが求められます。
こうした力をバランスよく伸ばすには、「どこに力を入れるか=個人目標の設定」が非常に重要です。
売上・コスト管理力
日々の数字を把握し、利益を出すための計画と実行力が問われます。
スタッフの採用・育成力
良い人材を見極め、早期に戦力化させる教育体制づくりが重要です。
チームマネジメント力
目標の共有や役割分担、職場の雰囲気づくりなど、チーム全体を動かす力が求められます。
顧客満足向上力
接客の質や店内の快適さを保ち、「また来たい」と思ってもらうための工夫も欠かせません。
業務改善・ルール設計力
オペレーションの無駄を省き、スタッフが働きやすい仕組みを整える力も大切です。
飲食店店長に関してさらに詳しく説明している記事はこちらです。
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目標を立てるメリット
スタッフのモチベーションアップにつながる
店長が明確な目標を持ちそれをスタッフと共有することで、「自分も頑張ろう」と前向きな気持ちが生まれます。
目標が見えることで、自分の役割も実感しやすくなります。
良いチームワークをつくる
目標という共通のゴールがあることで自然と協力体制ができ、日々の業務に一体感が生まれます。
「みんなでやり遂げる」空気が、働きやすい職場づくりに直結します。
店舗の課題が“見える化”される
目標を立てることで「いま何ができていて、何が足りていないか」を客観的に整理できます。
売上だけでなく育成・接客・仕組みづくりなど、店舗運営を多角的に見直すきっかけになります。
評価されやすくなる
明確な目標を設定しその進捗や成果を数値や行動で示せれば上司や本部からの評価にもつながりやすくなります。
「成果が見える」=「信頼につながる」という構造が生まれます。
店長自身の成長につながる
「ただ現場を回す」から「考えて動く」に変わることで、マネジメント力や課題解決力が自然と養われます。
将来的にSVやエリアマネージャーなどを目指すうえでも、大きな武器になります。
スタッフ育成や引き継ぎがしやすくなる
目標とその達成プロセスが可視化されていることで、次のリーダー育成や新人への引き継ぎもスムーズになります。
「自分がいなくても回る店」をつくる第一歩にもなります。
店長に求められる個人目標とは
「個人目標」と聞くと多くの方がまず思い浮かべるのは「売上〇%アップ」や「原価率の改善」といった数値的な成果ではないでしょうか。
もちろんこれらも重要な目標のひとつです。
しかし近年の飲食業界では「売上以外にも目を向けられる店長」が評価される時代に変わりつつあります。
店長が掲げるべき個人目標とは単なる業績向上を目指すものではなく、店舗全体の運営力・人材力・サービス品質などを底上げするための道しるべです。
またそれは「評価されるため」だけでなく、「チームを導き、店を育て、自分自身を成長させる」ための仕組みでもあります。
では実際にどのような分野から目標を立てるべきなのでしょうか?
以下のような多角的な視点が必要です。
- スタッフの定着・育成
- 接客品質の向上
- 業務改善・オペレーションの見直し
- チームづくり・働く環境の改善
スタッフの定着・育成
人手不足が続く飲食業界においてスタッフの離職率を下げ、長く活躍してもらうことは店舗運営の安定に直結します。
「新人の独り立ち期間の短縮」「離職率の低下」「教育制度の見直し」など、育成面を強化する目標は非常に効果的です。
接客品質の向上
「また来たい」と思ってもらえる接客ができているか。
お客様の満足度は目に見えるものではないので、どれくらい店に対していい印象をもってもらえているのか判断することは難しいですが、お客様アンケートやレビュー評価、クレーム件数などで測ることができます。
ロープレや朝礼などで日々の接客を磨く取り組みを目標に組み込むこともおすすめです。
業務改善・オペレーションの見直し
忙しい営業中でもミスやロスが起きにくい仕組みを整えることは、結果的にスタッフの負担軽減やミスの防止にもつながります。
「発注ミスを減らす」「作業の標準化を進める」など、裏方の効率化も立派な個人目標です。
チームづくり・働く環境の改善
目標を「チーム全体の行動に影響するもの」にすることで、店長としての“組織を育てる力”が問われます。
「スタッフとの定期面談を月1で実施」「全員が目標を共有できるミーティング運営」など、働く空気や信頼関係を良くすることも評価される重要な視点です。
目標の立て方
ここまでで、目標を立てることの重要性や飲食店店長に必要なスキルがわかったと思います。
しかしいざ目標をたてようと思ってもどのような手順で立てるべきなのかわからないといった悩みがあるでしょう。
以下を参考に実際に目標設定に取り組んでみましょう。
- 売上目標をスタッフと共有する
- 高すぎる目標はNG
- 目標は具体的に立てる
- 目標設定方法:SMART
- 目標別の目標例
売上目標をスタッフと共有する
目標は“自分だけのもの”ではありません。
特に売上や顧客満足といった店舗全体の成果に関わる目標は、スタッフ全員と共有し共に達成を目指すことが重要です。
たとえば「平日ランチの売上を10%上げたい」という目標がある場合、その背景や意図、実施する施策をスタッフと話し合い「みんなでつくる目標」として意識付けすると協力体制がぐっと強まります。
高すぎる目標はNG。段階を踏んだ目標を立てる
理想は高く、目標は現実的に設定することがポイントです。
急激な売上増やクレームゼロなど現場の実情に合わない目標設定は、かえってスタッフのやる気を下げてしまうことがあります。
「まずは3%アップを目指そう」「1ヶ月に1件でもクレームを減らそう」といった達成できる目標を段階的に積み重ねることで、成功体験と改善のサイクルを回しやすくなります。
目標は具体的に立てる
「頑張る」「意識する」などの抽象的な表現では成果が見えづらくなってしまいます。
目標はできるだけ具体的に「誰が・何を・いつまでに・どうやって行うか」が明確になっていることが理想です。
例)
✖「接客の質を高める」
◎「今月中に接客マニュアルを更新し、来月から週1のロープレを実施する」
目標設定方法:SMARTに考える
目標設定の定番フレームワーク「SMART」は店長業務にも非常に効果的です。
S:Specific(具体的)
例:「スタッフと月1回の面談を実施」など、曖昧さをなくすM:Measurable(測定可能)
例:「売上10%アップ」「CSアンケート評価4.5以上」など、数値で達成度がわかるA:Achievable(達成可能)
店舗の規模やリソースに応じて、無理のない範囲で設定するR:Relevant(関連性)
自店舗の課題や今期の方針と合っていることが重要T:Time-bound(期限付き)
「いつまでに達成するか」を明確にすることで行動に移しやすくなる
この5つを意識するだけで、目標の精度が大きく上がります。
目的別の目標例
実際に立てるときに迷わないよう目的別の具体例を以下にまとめました。
数値+行動セットで書くのがコツです。
目的 | 数値目標 | 行動内容 |
---|---|---|
新人育成 | 研修期間を平均2週間→1週間に | OJT表の導入+進捗面談週1回 |
接客強化 | CSアンケート平均4.2→4.5 | 接客ロープレを週1実施 |
離職防止 | 月の退職者数を2人→0人に | 個別面談+週1ヒアリング実施 |
売上拡大 | 平日ランチ売上10%アップ | チラシ配布+SNS販促 |
店舗改善 | クレーム件数を月5件→2件 | 月1で全スタッフに事例共有会実施 |
NGな目標設定例
せっかく目標を立てても「それでは評価がつけにくい」「現場で活用されない」と判断されてしまうこともあります。
その理由の多くは「曖昧」「非現実的」「独りよがり」の3点に集約されます。
以下に、店長がやってしまいがちなNG目標の具体例となぜ避けるべきなのかを解説します。
- 「頑張る」「努力する」など曖昧な表現
- 「売上アップ」だけの目標
- 現状を無視した実現不可能な目標
- 自分1人で完結してしまう目標
「がんばる」「努力する」など曖昧な表現
「スタッフ指導をがんばる」「店舗をより良くするよう努力する」といった目標は曖昧な表現であるため、目標として適していません。
一見よさそうに見える表現ですが「がんばる」「努力する」には基準も測定方法もないため、評価者やスタッフにとっては非常に伝わりづらい目標になります。
なぜNG?
何をもって「達成」とするのか不明
行動の中身が見えないので振り返りや改善にもつなげにくい
「売上アップ」だけの目標(手段や具体性が不明)
「月間売上を上げる」「客数を増やす」という目標は数字を使っているようで、「どうやって?」「誰と?」「いつまでに?」が明記されていないため、具体性に欠ける目標です。
なぜNG?
達成できた理由・できなかった理由が曖昧になる
チームに伝えても協力のしようがない
改善のコツ
「平日ランチ売上を10%アップするために今月中にSNS投稿とチラシ配布を実施する」など、目的+手段+期限をセットにするといいでしょう。
現状を無視した実現不可能な目標
「離職率をゼロにする」「客単価を1ヶ月で2倍にする」といった目標は理想としては素晴らしいですが、現場の状況を無視した非現実的な目標です。
このような目標はスタッフの信頼やモチベーションを下げる原因にもなります。
なぜNG?
達成できる見込みがないと、現場に「どうせ無理」という空気が広がる
失敗したときに店長の責任感が空回りしてしまう
改善のコツ
「今月は離職防止のヒアリングを全スタッフに実施する」など、行動ベースの目標にすることで前向きな積み上げが可能になります。
自分1人で完結してしまう目標(チームで動けない)
個人の成長は大切ですが「自分の接客スキルを高める」「発注精度を見直す」のような目標は店長の目標としてはもう一歩というところです。
店長という立場では“チームを巻き込める目標”こそが評価につながります。
1人で完結する内容だとスタッフにも店舗全体にも変化を生み出しづらくなります。
なぜNG?
チームの成長につながらずリーダーとしての影響力が発揮されない
店長の評価観点である「人材育成」「チーム運営」から逸れてしまう
改善のコツ
「自分の接客内容を動画で記録し、週1でチームに共有して改善案を話し合う」など、周囲を巻き込む仕組みを取り入れることがおすすめです。
飲食店の店長が目標達成のために実践すべきこと
目標を立てただけでは、成果は出ません。
大切なのはその目標をどう日々の現場に落とし込み、スタッフと一緒に動かしていけるかです。
店長自身の取り組みが、チームの空気・行動・成長に直結します。
ここでは、目標達成のために店長が実践すべき4つの具体的な行動をご紹介します。
- スタッフの長所を引き出していかす
- 明確な目標を持ちスタッフへゴールを示す
- スタッフと密にコミュニケーションをとる
- スタッフを指導できる知識と技術を身につける
1. スタッフの長所を引き出していかす
一人ひとりの強みを見つけ適切な役割を与えることはチームづくりの土台になります。
たとえば「接客が丁寧なスタッフ」には新人教育を任せてみたり「メニューに詳しいスタッフ」にはおすすめ提案のPOPづくりをお願いするなど、“その人にしかない価値”を活かす配置が効果的です。
ポイント
- 長所は「声のトーン」「気配り」「真面目さ」など小さな部分でもOKです
- 褒めると同時に任せることが信頼につながります
- 「期待してるよ」と言葉にすることで本人の自信にもなります
2. 明確な目標を持ちスタッフへゴールを示す
店長が「何を目指しているのか」があいまいなままだとスタッフは迷ってしまいます。
「この1ヶ月で売上10%アップを目指す」「新人が1週間で独り立ちできる仕組みを整える」など、チーム全員が同じ方向を向ける“わかりやすいゴール”を提示することが重要です。
ポイント
店舗の数値目標や重点施策は朝礼やミーティングでしっかり共有しましょう
個々の役割とリンクさせて伝えることで主体的に動けるようになります
目標があると日々の判断にもブレが出ません
3. スタッフと密にコミュニケーションをとる
目標達成に向けて最も大切なのは「人」です。
スタッフ一人ひとりと信頼関係を築くには報連相(報告・連絡・相談)だけでなく、日常的な雑談や気づきの共有が鍵になります。
ポイント
「最近どう?」「今、やりにくいことある?」など、雑談の中にヒントが隠れています
ミスやトラブル時ほど感情的にならず“聴く姿勢”を大事にしましょう
逆に良い行動はその場でしっかり褒めて「見てるよ」という姿勢を示しましょう
4. スタッフを指導できる知識と技術を身につける
指導やマネジメントは、現場経験だけに頼っていると限界があります。
「なんとなく」で教えるのではなく、育成計画の立て方・伝え方・フィードバックの方法などを学ぶことが必要です。
ポイント
育成フローを「見える化」する(チェックリストやマニュアルの作成など)
定期的にマネジメント研修や書籍などでインプットを行う
学んだことを自店に合わせてカスタマイズする工夫も評価につながります
まとめ|店長の目標は“店づくり”と“自分づくり”の両方につながる
店長としての個人目標は、単なる売上アップのためだけのものではありません。
それは「理想の店をつくるための地図」であり「自分自身の成長を支える指針」でもあります。
数字を追いかけることももちろん大切ですが、それ以上に大事なのはスタッフとチームとしてどう歩み、どんなお店にしていきたいのかというビジョンです。
目標にはチームの一体感を高め、スタッフのやる気を引き出し、働きやすい環境をつくる力があります。
同時に自分の強みや課題を客観的に見つめ直す良い機会にもなります。
いきなり完璧な目標を立てる必要はありません。
まずは「今の店にとって一番必要なことは何か?」を考え、小さな行動から始めるだけでも立派な一歩です。
今日から自分とお店の未来を見据えて目標を見直してみませんか?
きっとその先にはもっと信頼される店長としての姿とより良いお店づくりが待っているはずです。
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