飲食店では丁寧な接客やおいしい料理を提供していても、クレームが発生することはあります。
クレームは、初動対応を誤るとお客様の不満が大きくなりかねません。
SNSや口コミに悪評を書き込まれるのは、店舗の評価が地に落ちる危険な要因です。
逆に適切な対応ができれば、信頼を取り戻し、再来店につなげられる可能性を高められます。
この記事では、飲食店のクレーム対応が重要な理由、基本となる5ステップ、よくある事例ごとの対応方法や避けたいNG行動、そのほかカスタマーハラスメントへの対処法まで、現場で役立つポイントを解説します。
飲食店でクレーム対応が重要視される理由
飲食店のクレーム対応は、お客様の信頼を守るだけでなく、店舗の評判や売上にも影響する重要な業務です。
日本労働組合総連合会がおこなった「消費者行動に関する実態調査」では、接客業で働く人の多くが、お客様から苦情やクレーム、迷惑行為を受けた経験があると回答しています。
飲食店では、日常的に多くのお客様と接するため、クレームが発生することを前提に準備しておくことが大切です。
近年はSNSや口コミサイトが普及し、対応に少し失敗しただけでもその内容が世間に短時間で広まる時代になりました。
だからこそ、スタッフ一人ひとりが適切な対応方法を身につけなければなりません。
クレームが発生するような事態でも、誠実で迅速な対応さえすれば、不満を持ったお客様の心も多少なりとも和らぎます。
飲食店のクレーム対応の基本5ステップ
クレーム対応は、初動対応で収束するか、さらに大きな問題へ発展するかの分かれ道です。
ここでは、現場で迷わず対応するために、飲食店で押さえておきたい基本の5ステップを解説します。
①まずは不快な思いをさせたことを謝罪する
クレームを受けたら、まずはお客様へお詫びの気持ちを伝えるのがポイントです。
事実関係が分からない状況でも「ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」と伝えましょう。
お客様側からすると、無下にされずに話を聞いてもらえる可能性が生まれて安心できます。
ただし、事実関係が分からない状況では、店舗側も責任を全面的に認めなくてもかまいません。
事実確認が終わっていない状況で、返金や補償の約束はしないようにしましょう。
約束してしまうと、言った言わないの問題になりかねず、後々の対応に悪影響が出る場合もあります。
まずは、お客様が不快な思いをした事実に対しての謝罪が先決です。
②お客様の話を最後まで遮らずに聞く
謝罪後は、お客様の話を最後まで落ち着いて聞くようにします。
途中で言い訳や反論をしたくなる場面もあるかもしれません。
ただ、お客様が「自分の話を聞いてくれない。誠意がない」と感じれば、怒りが増幅してしまい止まらなくなる危険性があります。
冷静に相づちを打ちながらお客様の話を聞き「いつ」「どこで」「何が起きたのか」を整理してメモを取りましょう。
内容を正確に記録しておけば、その後の事実確認やスタッフ間での情報共有もスムーズになります。
まずは言い分に耳を傾ける姿勢そのものが、お客様の気持ちを落ち着かせることにつながります。
③事実関係を正確に確認する
お客様の話を聞いた後は、スタッフや厨房、伝票などを確認し、客観的な事実を把握します。
注意したいのは思い込みによる判断で、誤った対応につながってトラブルが大きくなるおそれがあります。
確認する際は「おそれ入りますが、状況を確認させていただいてもよろしいでしょうか」と一言添えることが大切です。
また、確認に時間がかかる場合、おおよその時間を伝えておけば、お客様の不安も和らぎます。
正確さはもちろん、慎重で丁寧な事実確認が適切な解決策につながります。
④誠実かつ迅速に解決策を提示する
事実確認ができたら、状況に応じた解決策を提案します。
料理の交換や返金など、店舗で対応できる内容にもとづいて迅速に案内しましょう。
対応が遅れるほど、お客様の不満は大きくなってしまいます。
現場だけで判断できない場合、「責任者に確認いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか」と正直に伝えることが重要です。
その場しのぎの無責任な約束は避け、店舗のルールに沿って対応しましょう。
⑤再度謝罪し、ご意見への感謝を伝える
対応が終わった後も、お詫びの言葉で終わらせてはいけません。
最後に改めて謝罪するとともに「貴重なご意見をいただき、ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えます。
クレームは店舗側で気づけなかった改善点を知る機会です。
責任者がお見送りの際、再度お詫びを伝えることで、店舗に対するお客様の印象が良くなることもあります。
最後まで誠実な姿勢を貫くことが、信頼回復への第一歩です。
飲食店でよくあるクレーム事例5選と対応のポイント
飲食店で発生するクレームは、内容がおおよそ決まっています。
事例ごとの適切な対応を知っておけば、慌てず冷静に行動できるため、押さえておきたいところです。
ここでは、現場でよく見られる5つのクレームと、対応のポイントを解説します。
異物混入(毛髪・虫など)
飲食店のクレームの中でも、特に慎重な対応が求められるのは異物混入です。
対応を誤ると、SNSや口コミサイトで情報が拡散し、店舗の信用に影響を及ぼす可能性があります。
異物混入が確認されたら、まずはお客様へ誠実に謝罪し、料理を速やかに下げましょう。
そのうえで、新しい料理への交換や返金など、店舗の基準に沿って対応します。
異物は原因調査のため保管し、改めて厨房や調理工程を確認することが大切です。
対応後は、再発防止策をスタッフ全員で共有しましょう。
衛生管理や盛り付け時の最終確認を徹底することで、同様のトラブルを防ぎやすくなります。
スタッフの接客態度
「態度が冷たい」「言葉遣いが悪い」「私語が気になる」など、接客態度に対するクレームもよく見られます。
接客に対する印象は、お客様の満足度に影響します。
まずはお客様へ謝罪し、不快な思いをさせたことに対してお詫びを伝えましょう。
その後、対応したスタッフから正確な状況を聞き取りますが、一方的な判断は避けなければなりません。
お客様とスタッフの認識に違いがあると事態が余計にこじれるため、まずは事実を整理することが重要です。
同じ内容の指摘が繰り返される場合、接客マナーや言葉遣いを見直す機会として活用できます。
朝礼やロールプレイングで改善を図ることが、再発防止に有効です。
料理・ドリンクの提供が遅い
提供時間に関するクレームは、混雑する時間帯を中心に発生しがちです。
よくある原因は人手不足や注文の集中ですが、状況が伝わっていないお客様からすれば、長時間待たされているだけの状況のため不満につながります。
料理の提供が遅れると分かった時点で「現在、混み合っております。あと10分ほどでご提供いたします」など、見込み時間を伝えることが有効な対策です。
状況を説明するだけでも、お客様の不安を和らげられます。
また、キッチンとホールで情報を共有し、提供が遅れているテーブルを把握しておくことも重要です。
状況を見ながら声掛けをおこなうことで、クレームを未然に防げる場合もあります。
味や品質への指摘
味の好みには個人差があるため、レシピどおりの忠実な調理だとしてもクレームが発生することはあります。
その際、お客様の意見を否定したり、言い返したりすることは避けたいところです。
「貴重なご意見をありがとうございます」と受け止めたうえで、必要に応じて料理の交換や責任者への引き継ぎをおこないます。
ひとりのお客様の感想だけで判断できるものではありませんが、同じ指摘が続くようなら話は別で、改善を検討する判断も必要です。
定期的にレシピや盛り付けのほか、食材管理まで見直すことで、品質のばらつきを防ぎやすくなります。
食中毒・体調不良の訴え
食中毒や体調不良に関する申し出は、お客様の健康に関わるため、最も慎重な対応が必要です。
感情的なやり取りは避け、事実確認を丁寧に進めることが肝心です。
まずはお客様の体調を気遣い、医療機関の受診をお願いするとともに、診断内容を確認します。
店舗では使用した食材や調理記録を保管し、必要に応じて保健所の調査へ協力できる体制を整えます。
原因が判明する前に責任を断定したり、補償を約束したりすることは避けましょう。
責任者を中心に、行政機関とも連携しながら適切に対応することが重要です。
飲食店のクレーム対応で避けたいNG行動
飲食店のクレーム対応では、何をするかだけでなく、何をしてはいけないかを知ることも重要です。
何気ない一言や態度が、お客様の怒りを増幅させるきっかけになることもあります。
特に避けたいのが「担当ではありません」「決まりですので」と、他に責任を押し付けるような発言です。
また、お客様の話を途中で遮ったり、言い訳を繰り返したりすると「誠意がない」と受け取られかねません。
そのほかにも、複数のスタッフへ対応を引き継ぐ「たらい回し」や、無表情で機械的に対応する振る舞いも印象を悪くします。
クレーム対応では、お客様の立場に寄り添う姿勢を最後まで忘れないことが大切です。
飲食店のクレーム対応で使える謝罪フレーズ・NGフレーズ集
クレーム対応では、言葉の選び方次第で、お客様の受け取り方が変わります。
落ち着いて対応するためにも、基本となるフレーズを覚えておきましょう。
使いたい謝罪フレーズ
「ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」
「ご迷惑をおかけして、深くお詫び申し上げます」
「状況を確認いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか」
「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます」
「今後このようなことがないよう、改善に努めます」
避けたいNGフレーズ
「でも、そういう決まりです」
「私は聞いていません」
「それはお客様の勘違いではありませんか」
「忙しかったので仕方ありません」
「じゃあ、どうすればよかったのでしょうか」
否定や言い訳から入るような言葉は、お客様の感情を逆なでしかねません。
まずはお客様の話を受け止め、誠実な言葉で対応することを心掛けましょう。
飲食店の悪質なクレーム・カスタマーハラスメントへの対応
飲食店では、通常のクレームと悪質なクレームとでは、区別して対応しなければなりません。
社会通念を超える要求や迷惑行為は、カスタマーハラスメント(カスハラ)に該当する可能性があります。
従業員を守るためにも、店舗として適切な対応基準を設けておきたいところです。
近年、カスハラへの対策が全国的に進んでいます。
東京都では、2025年4月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されました。
従業員を守るための取り組みが、事業者には求められています。
厚生労働省も、カスタマーハラスメント対策マニュアルを公表しており、組織として対応する重要性を示しています。
土下座の強要や長時間にわたる拘束のほか、暴言・脅迫、過度な金銭要求などは、通常とは性質が異なるクレームです。
このような場合、クレームを受けたスタッフひとりが対応を続けるのではなく、責任者へ速やかに引き継ぐことが重要です。
対応内容や会話は日時とともに記録し、必要に応じて警察や弁護士など、関係機関へ相談しましょう。
スタッフが安心して働ける環境を整えることは、お客様へ安定したサービスを提供することにもつながります。
店舗全体で対応方針を共有し「従業員を守る」という意識が重要です。
飲食店のクレームを未然に防ぐ対応のコツ
飲食店のクレームは、日頃の教育や業務改善で減らせるものもあります。
クレーム対応以外にも「クレームを発生させない仕組み」を整えることが、店舗運営では重要です。
まず取り組みたいのが、クレーム対応マニュアルの作成です。
対応手順や報告ルール、責任者への引き継ぎ基準を明確にできれば、スタッフによる対応のばらつきを防げます。
新人教育ではロールプレイングを取り入れ、実際の場面を想定した練習を何度もおこなえば、現場でも落ち着いて対応しやすくなります。
また、発生したクレームは店舗全体で共有し、原因と改善策を話し合うことも大切です。
同じ失敗を繰り返さないためには、個人の問題として終わらせるのではなく、店舗全体の課題としてとらえなければなりません。
さらに、モバイルオーダーやキッチンモニターなどのシステムを活用すれば、注文ミスや提供遅延を減らせます。
人の注意力だけに頼るのではなく、構築した仕組みでミスを防ぐことも有効な対策です。
飲食店はクレーム対応を身につけよう!
飲食店のクレーム対応は、お客様の不満を解消するだけではありません。
適切な対応ができれば、店舗への信頼感も高まりますし、お客様の再来店や、口コミ評価の向上につながることもあります。
クレームが発生した際は「謝罪」「傾聴」「事実確認」「解決策の提示」「感謝」の5つのステップを意識し、落ち着いて対応することが大切です。
また、異物混入や提供遅延など、よくある事例への対応方法を共有しておけば、現場で慌てずに行動できるようになります。
一方、土下座の強要や暴言などの悪質な要求は、通常のクレームとは切り離して対応したほうがいいトラブルです。
従業員が安心して働ける環境を守ることは、健全な店舗運営にとって重要な意味を持ちます。
クレーム対応は個人の経験だけに頼るものではありません。
店舗全体で学び、改善を続けることで対応力を高められます。
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