飲食店の開業を考えたとき「10年で9割が廃業する」などの話を耳にしたことはありませんか。
実際のところ、この数字は調査対象や算出方法によって異なり、すべての飲食店に一律に当てはまるものではありません。
ただ、飲食店の競争が激しいのは事実です。
資金不足や集客の失敗のほか、人手不足などを理由に閉店する店舗があることは否定できません。
この記事では、中小企業庁や日本政策金融公庫、帝国データバンクなどのデータをもとに、飲食店の生存率や廃業率を年数別・業態別に解説します。
さらに、廃業につながる主な原因や、長く営業を続けるために取り組みたい具体的な対策も整理しました。
開業を検討している方や、店舗経営に不安を感じている方は参考にしてください。
飲食店の生存率・廃業率とは?基本を理解しよう
飲食店の生存率を正しく理解するには「生存率」「廃業率」「倒産件数」の違いを知ることが大切です。
これらは似た言葉ですが、示している内容はそれぞれ異なります。
生存率とは、開業した店舗のうち、一定期間が経過した後も営業を続けている店舗の割合です。
生存率が70%なら、100店舗のうち70店舗が営業を継続できていると判断できます。
一方、廃業率は営業を終えた店舗の割合です。同じ調査対象と期間で集計した場合、生存率とは補完関係にあります。
また、倒産と廃業は同じではありません。
倒産は、資金繰りが行き詰まり、法的整理や事業停止に至ったケースを指すことが一般的です。
これに対し、廃業には、経営者の引退や後継者不足、事業の見直しによる自主的な閉店も含まれます。
そのため、倒産件数が少ないから安心とはいえず、廃業率が高いからといって、すべての廃業が経営失敗とも判断できません。
飲食店の現状を正しく把握するには、それぞれのデータが何を対象としているのかを確認したうえで、読み解くことが重要です。
【最新データ】飲食店の生存率は年数でどう変わる?
飲食店の生存率は、開業からの年数が長くなるほど低下する傾向にあります。
特に開業後3年までは経営が安定しにくく、多くの店舗がこの時期に閉店しています。
まずは、公的機関などが公表しているデータをもとに、生存率の推移を見ていきましょう。
開業1年後・3年後の生存率
飲食店は開業直後から、厳しい経営環境に直面します。
帝国データバンクによると、2025年の飲食店倒産件数は900件となり、2024年の894件を上回って過去最多を更新しました。
物価高や人件費の上昇に加え、人手不足も経営を圧迫しています。
飲食店の1年後・3年後の生存率について、公的統計から一律の数値を示すことは困難です。数値を掲載する場合は、調査名・調査対象・調査期間・算出方法を明記する必要があります。
開業当初は新規客を獲得できても、リピーターが定着せず、売上が安定しないケースも少なくありません。
2024年版『小規模企業白書』では、「宿泊業,飲食サービス業」は開業率・廃業率ともに全業種で最も高いと示されています。
開業後、すぐに利益を出そうと焦るのではなく、十分な運転資金を確保しながら、経営基盤を整えることが重要です。
開業後約5年の廃業割合
開業から5年、10年と営業を続けるにつれて、生存率はさらに低下します。
日本政策金融公庫の『新規開業パネル調査』では、飲食店・宿泊業の廃業率は、全業種の中でも高水準です。
日本政策金融公庫の調査では、2016年に開業した企業のうち、「飲食店、宿泊業」の2020年末までの廃業割合は14.7%でした。過去の調査対象群では18.9%、23.2%となっており、いずれも業種別では高い水準です。
ただし、調査対象や算出方法によって数値は異なるため、あくまで目安としてとらえることが大切です。
開業から5年以上経過すると、新規客の獲得だけで売上を維持するのは困難です。
リピーターづくりや原価・人件費の管理など、経営全体を見直しながら改善を続ける店舗ほど、長く営業を続けられる傾向があります。
飲食店の生存率は業態によって違う?
飲食店と一口にいっても、業態によって生存率は異なります。
初期投資や利益率、競合の多さなどが経営に影響するためです。
ここでは、代表的な業態ごとの特徴を見ていきます。
居酒屋・酒場の生存率
2025年の帝国データバンクの調査では、居酒屋を主体とする「酒場・ビヤホール」の倒産件数は204件で、飲食業態の中で最多となりました。
背景には、アルコール離れや在宅勤務の定着があります。
会社帰りの飲み会需要が以前より減少し、売上を伸ばしにくい状況が続いています。
また、深夜営業に対応するための人件費負担もあり、利益を確保しにくいことが課題です。
近年は、昼営業やテイクアウト、地域密着型のイベントなど、新たな需要を取り込む店舗が増えています。
時代の変化に合わせて、営業スタイルを柔軟に見直せるかどうかが、生存率を左右するポイントです。
出典:帝国データバンク|2025 年の「飲食店」倒産過去最多の900件3年連続で増加
ラーメン店・カフェの生存率
ラーメン店やカフェは、比較的開業しやすい業態として人気があります。
しかし、その分だけ競合も多く、価格競争に巻き込まれやすいことが特徴です。
飲食店ドットコムが閉店店舗4,121件を調査したところ、ラーメン店では、閉店店舗の62.65%が営業3年以内に閉店していました。
原材料費の高騰や光熱費の上昇も利益を圧迫し、思うように利益を残せない店舗も少なくありません。
カフェも同様に、雰囲気や立地だけでは差別化が難しくなっています。
メニューの特徴やSNSでの発信、居心地の良い空間づくりなど、継続的な工夫が求められます。
出典:Synchro Food|閉店しやすい業態は?飲食店ドットコムが業態別閉店率を発表
寿司店・フレンチなど専門料理店の生存率
同調査では、閉店店舗のうち3年以内に閉店した割合は、寿司店が32.43%、フランス料理店が40.29%でした。
理由のひとつは、開業までの修行期間中に、技術や経験を十分に積んでから独立する人が多いためです。
また、専門的な技術が必要で参入障壁が高いため、競合が相対的に少ないことも理由として考えられます。
もちろん、専門料理店でも、経営が安定するとは限りません。
しかし、高い技術力や固定客を獲得しやすい環境は、長期経営につながる強みです。
出典:Synchro Food|閉店しやすい業態は?飲食店ドットコムが業態別閉店率を発表
飲食店の生存率が低い理由
飲食店の廃業には、共通する原因があります。
ひとつの要因だけで閉店するケースは少なく、資金や集客、人材など、複数の課題が重なることで経営が厳しくなる傾向です。
初期投資が大きく回収に時間がかかる
飲食店の開業には、内装工事費や厨房設備費、保証金など、多額の初期費用がかかります。
規模によっては、数百万円から1,000万円以上になることも珍しくありません。
開業直後は売上が安定しないため、投資した資金を回収するまで時間がかかります。
想定より売上が伸びないと、返済や家賃の支払いが経営を圧迫することもあります。
そのため、開業資金だけではなく、営業を続けるための運転資金まで見据えた資金計画が重要です。
運転資金の不足
飲食店は開業した直後から黒字になるとは限りません。
認知度が低いうちは来店客も少なく、赤字が続くこともあります。
運転資金に余裕がないと、家賃や仕入れ、人件費などの支払いも難しくなります。
売上が伸びる前に資金が尽きる危険性も、考えておきたいところです。
半年から1年程度は赤字でも営業を続けられるように準備しておけば、余裕を持った経営ができます。
問題が発生したときでも、慌てずに改善策を実行しやすくなります。
人手不足・採用のミスマッチ
飲食業界の経営課題は、慢性的な人手不足です。
スタッフを募集しても、応募が集まらなかったり、採用しても短期間で離職したりするケースもあります。
人手が不足すると、営業時間を短縮したり、定休日を増やしたりせざるを得ない場合があります。
残ったスタッフの負担が増えれば、職場環境は余計に悪化して、離職が連鎖する悪循環に陥りかねません。
特に個人経営の店舗では、経営者自身が長時間労働を続ける状況に陥りやすくなります。
その結果、体力的・精神的な負担は増大します。
安定した店舗運営には、スタッフが長く働きたいと思えるような職場づくりが不可欠です。
経営ノウハウ・数字管理の不足
料理技術や接客力が高くても、経営がうまくいくとは限りません。
利益を残すには、売上だけでなく、原価率や人件費率、利益率などの数字を把握しながら店舗を運営する必要があります。
数字の管理が苦手だからと避けていると、原価率の上昇に気づけない可能性があります。
売上が増えたとしても、利益は思うように残りません。
人件費が売上に見合っているか確認しなければ、知らないうちに収益を圧迫していることもあります。
経営が安定している店舗ほど、日々の売上やFLコスト、損益分岐点などを定期的に確認しています。
数字に基づいて改善を繰り返すことは、長く営業を続けるための大切な土台です。
飲食店の生存率を考えるうえで確認したい「10年で9割廃業」の真実
「飲食店は10年で9割が廃業する」という話を聞いたことはありませんか。
しかし、この数字だけを見て「飲食店はほとんど成功しない」と考えないようにしましょう。
調査ごとに対象や集計方法が異なり、結果にも違いが生じるためです。
法人だけを対象にした調査と、個人事業主を含めた調査では数値が変わります。
倒産件数は、法的整理を伴うケースが中心です。
廃業の場合、経営者の引退や後継者不足など、自主的な閉店も含まれます。
フランチャイズ加盟店を含めるかどうかや、対象店舗の開業年によっても結果は異なります。
このことから「10年で9割」という数字だけを鵜呑みにしないようにしましょう。
どの機関がどのような条件で調査したデータか、慎重に確認することが重要です。
飲食店生存率を高めるために今日からできる対策
飲食店の生存率を高めるために、特別な経営手法だけに頼るのはよくありません。
基本的な経営の積み重ねが、長く営業を続けることにつながります。
今日から実践できるポイントを4つ紹介します。
資金計画と収支管理を徹底する
開業前に、内装費や設備費だけでなく、営業開始後の運転資金まで見込んだ資金計画を立てましょう。
売上が想定より伸びなくても、営業を続けられるように、半年から1年程度の運転資金を確保しておくことが重要です。
開業後は、毎月の売上だけを見るのではなく、原価率や人件費率、利益率を確認する習慣も必要です。
数字の変化に早く気づければ、小さな改善を積み重ねていけます。
経営状況を感覚だけで判断せず、数字を根拠に意思決定することが、生存率を高める第一歩です。
立地とコンセプトを明確にする
飲食店は、立地とコンセプトの組み合わせによって集客力が変わります。
人通りが多い場所でも、ターゲットと店舗の特徴が合っていないと、期待した来店数にはつながりません。
オフィス街と住宅街では、利用する時間帯や客層は異なります。
立地に合わせて価格帯やメニュー、店舗の雰囲気まで設計すると、地域のニーズに合った店づくりができます。
開業前に競合店を調査し「誰に、何を、どのように提供する店なのか」を明確にすることが重要です。
集客とリピーター施策を継続する
「料理がおいしければ、自然にお客様が増える」という考え方では、集客に苦戦しかねません。
現在は来店前にインターネットで店舗を探す人が多いため、情報発信にも力を入れることが大切です。
GoogleビジネスプロフィールやSNSを活用すれば、広告費を抑えながら、店舗の魅力を発信できます。
季節限定メニューやイベント情報を継続的に投稿すると、多くの人に店舗を知ってもらいやすくなります。
また、一度来店したお客様に再び足を運んでもらうために、LINE公式アカウントや会員制度などを活用し、リピーターを増やす取り組みも効果的です。
人材確保と定着への投資
人材不足は、飲食店の生存率を左右する大きな要因のひとつです。
採用活動だけに力を入れるのではなく、働きやすい環境づくりにも取り組むことで、定着率の向上につながります。
教育体制や適切な評価制度の整備は、スタッフが安心して働ける環境づくりに必要です。
職場の雰囲気が良くなることで、お客様へのサービス品質も向上しやすくなります。
飲食業界に特化した採用サービスを活用することも有効です。
業界に精通した採用支援を受けることで、自店に合った人材と出会える可能性が高まります。
飲食店の生存率を考えるうえで知っておきたい黒字休廃業のケース
飲食店の廃業は、赤字経営だけが原因ではありません。
黒字でも、将来の経営環境を考えて休廃業を選ぶ企業はあります。
ただし、帝国データバンクの調査は企業全体を対象としており、飲食店に限定した結果ではありません。
帝国データバンクの調査では、経営者の高齢化や後継者不足を理由に事業を終えるケースが多く見られます。
また、人手不足や物価高などを背景に「今後も経営を続けられるだろうか」と不安になり、黒字のうちに閉店を決断する経営者も増えてきました。
長く店舗を続けるには、目先の利益だけでなく、将来を見据えた経営計画が重要です。
事業承継や人材育成も含めて準備を進めることで、店舗を継続できる可能性が高まります。
飲食店の生存率を高めるには?廃業リスクを減らす経営のポイント
飲食店の生存率は、開業後の準備や経営判断ひとつで変わります。
「10年で9割が廃業する」という数字だけを見ると、厳しい印象を受けるかもしれません。
ただし、調査方法によって数値は異なります。
大切なのは、数字の背景を理解し、自店舗に必要な対策を続けることです。
資金計画や収支管理を徹底し、明確なコンセプトのもとで、集客や人材育成に取り組むことが大切です。
日々の経営改善を積み重ねることで、廃業リスクは抑えやすくなります。
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