飲食店の離職率はなぜ高い?データで見る5つの原因と今日からできる改善策

飲食店の経営者にとって、人手不足やスタッフの早期退職は深刻な課題です。
求人を出しても応募が集まらず、採用できても数か月で辞めてしまう状況が続けば、残ったスタッフの負担も増えていきます。
その結果、接客や料理の品質が低下し、店舗の売上にまで影響する可能性があります。

厚生労働省の調査を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」は全産業の中でも離職率が高い業種です。
ただし、給与や労働時間だけが原因とは限りません。
教育体制や人間関係、評価制度など、複数の要因が重なっているケースもあります。

本記事では、公的データをもとに飲食店の離職率を確認し、スタッフが辞める原因と定着率を高めるための改善策を解説します。

飲食店の離職率はどれくらい?最新データで見る業界の現状

飲食店の離職率を考える際は、自店の感覚だけではなく、業界全体のデータと比較することが大切です。
ここでは、厚生労働省の「雇用動向調査」と「新規学卒就職者の離職状況」をもとに、離職率の実態を確認します。

主要産業の中で最も高い宿泊業・飲食サービス業の離職率

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査結果の概況」によると、2024年の「宿泊業,飲食サービス業」の離職率は25.1%でした。
全産業平均の14.2%と比べると、10.9ポイント高い水準です。
前年の26.6%からは1.5ポイント低下したものの、16の主要産業の中では最も高くなっています。

一方、同業種の入職率は28.4%で、離職率を上回りました。働き始める人も多い一方で、辞める人も多く、人材の入れ替わりが激しい業界であることがわかります。

参考:厚生労働省|令和6年雇用動向調査結果の概況

一般労働者よりパートタイム労働者の離職率が高い

同調査によると、「宿泊業,飲食サービス業」における一般労働者の離職率は18.1%、パートタイム労働者は29.9%でした。
パートタイム労働者の離職率は、一般労働者の約1.7倍です。

飲食店では、学生や副業人材、子育て中の人など、さまざまな事情を持つスタッフが働いています。
卒業や転居など、店舗側では防げない離職もありますが、希望どおりにシフトへ入れない、十分な教育を受けられないといった理由で退職するケースも考えられます。

なお、雇用動向調査の「一般労働者」は、正社員だけを指す区分ではありません。
離職率を比較するときは、一般労働者と正社員を同じ意味で扱わないよう注意が必要です。

参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」

新卒者は3年以内に半数以上が離職

厚生労働省が2025年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、2022年3月卒業者のうち、「宿泊業,飲食サービス業」に就職して3年以内に離職した割合は、大学卒が55.4%、高校卒が64.7%でした。
大学卒では半数以上、高校卒では6割以上が3年以内に離職しています。どちらも産業全体の離職率を20ポイント以上上回る結果です。

若手スタッフは、仕事の進め方や社会人としての基本を十分に理解していない場合があります。
採用後すぐに現場へ立たせるだけでは、本人が不安や孤立を感じても不思議ではありません。
若手を採用する店舗には、仕事を段階的に教え、入社後の悩みを相談できる環境を整えることが求められます。

参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況

なぜ飲食店の離職率は高いのか?考えられる5つの原因

飲食店の離職率が高い背景には、勤務時間や給与だけではなく、教育体制や人間関係なども関係しています。
スタッフが辞める理由は一人ひとり異なるため、「最近の若者は続かない」などと結論づけず、自店で起きている問題を具体的に確認することが重要です。

長時間労働や不規則なシフトによる負担

飲食店は、ランチタイムや夕食時、土日祝日など、多くの人が休憩を取る時間帯や休日に忙しくなる業種です。
営業時間の前後には仕込みや片付けもあり、店舗によっては中抜けを含むシフトによって拘束時間が長くなることもあります。

厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」では、宿泊業・飲食サービス業の週所定労働時間は40時間2分でした。
調査対象となった産業の中で最も長い結果です。
ただし、この調査は常用労働者30人以上の民営企業を対象としているため、小規模な個人店にそのまま当てはまる数字ではありません。

さらに、ホールでは長時間の立ち仕事、厨房では熱気や重量物の運搬が発生します。
休憩や休日を十分に取れなければ、身体的な負担が積み重なり、退職につながりやすくなります。

参考:厚生労働省|令和7年就労条件総合調査の概況

仕事内容に対して給与が低いと感じやすい

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の賃金は全産業平均で月額34万600円でした。
これに対し、「宿泊業,飲食サービス業」は27万7,200円で、主要産業の中では最も低い水準です。
この賃金は、2025年6月分の所定内給与額であり、残業代や賞与などを含む年収ではありません。それでも、産業間に給与差があることは確認できます。

飲食店では、接客や調理に加え、清掃、在庫管理、クレーム対応などを任されるスタッフも少なくありません。
求められる仕事が増えても給与や手当が変わらなければ、「責任に見合う待遇ではない」と感じやすくなります。

参考:厚生労働省|令和7年賃金構造基本統計調査の概況

シフト制によって情報共有が不足しやすい

シフト制の職場では、スタッフ全員が同じ時間に集まる機会が限られます。
店長が伝えた内容が遅番のスタッフに届かなかったり、スタッフによって教え方が異なったりすると、現場に混乱が生じます。
伝達不足によるミスであっても、本人の注意不足として叱責されれば、不満を感じるでしょう。

特定のスタッフに負担が偏ったり、忙しさから強い口調で指示を出したりする状態が続くと、人間関係も悪化します。
退職面談で「人間関係が理由」と言われても、実際には情報共有の仕組みや業務分担に問題がある場合があります。
個人同士の相性だけで片づけず、伝達方法や指示系統まで確認することが必要です。

教育体制がなく入社後に孤立しやすい

人手が足りない店舗では、新人を十分に教育する余裕がなく、初日から現場で仕事を覚えてもらうことがあります。
しかし、教える人によって手順が違ったり、質問するたびに忙しそうな反応をされたりすれば、新人は何を基準に動けばよいのかわかりません。
ミスを避けるために指示を待っていると、今度は「自分から動かない」と評価される可能性もあります。

特に未経験者は、専門用語や店舗独自のルールを理解していません。
仕事の習得を本人の適応力だけに任せてしまうと、仕事を覚える前に自信を失い、早期離職につながります。

評価基準とキャリアパスが見えにくい

勤務年数が増えても給与や役割が変わらず、何を達成すれば昇給できるのか説明されなければ、スタッフは将来の姿を描きにくくなります。
店長や料理長を目指したい人だけでなく、接客や調理の専門性を高めたい人もいます。
それにもかかわらず、キャリアの選択肢が店長への昇格だけでは、スタッフの希望と合わない場合もあるでしょう。

評価基準が店長の主観に左右されている店舗も注意が必要です。
遅刻の少なさや作業速度だけではなく、後輩への指導、衛生管理、顧客対応なども評価対象として明文化することで、働き続ける目標を持ちやすくなります。

離職率の高さが招く経営リスク

スタッフの退職は、欠員が出るだけの問題ではありません。
採用や教育の負担が繰り返し発生し、店舗のサービス品質にも影響します。

採用・教育コストが増えてサービス品質が低下する

退職者が出るたびに求人を掲載すれば、求人広告費がかかり、採用担当者も対応に時間を割かなければなりません。
新しいスタッフを採用した後も、研修やOJTに既存スタッフの時間を使います。

新人の割合が高い状態が続くと、注文の聞き間違いや提供の遅れが起きやすくなります。
採用人数だけを追いかけるのではなく、「入社後3か月以内の離職率」や「一人前になるまでにかかる期間」も確認し、採用と定着を一体で改善することが大切です。

残ったスタッフの負担が増えて離職が連鎖する

退職者が出てもすぐに補充できなければ、残ったスタッフが追加でシフトに入ったり、担当外の仕事を引き受けたりしなければなりません。
負担が一時的であれば協力を得られるかもしれませんが、人手不足が長引けば疲労や不満が蓄積します。

教育担当者が疲弊して新人への指導が不十分になり、その新人も辞めてしまうという悪循環も起こり得ます。
離職が続いてから対策を考えるのではなく、欠勤の増加や希望シフトの減少、スタッフ同士の会話の変化など、小さな兆候を早めに把握することが重要です。

飲食店の離職率を下げるための6つの改善策

離職率を下げるには、単発のイベントや一時的な手当だけではなく、日常の店舗運営を見直す必要があります。
すべてを同時に変えるのが難しい場合は、退職者へのヒアリングや勤怠データから優先順位を決めましょう。

労働時間とシフトの組み方を見直す

まずは、スタッフごとの労働時間、残業、連続勤務、休日取得状況を確認します。
人手不足を理由に、特定の人に負担が集中していないかを確認することが大切です。

希望休を提出できるようにしていても、実際には申請しにくい雰囲気があれば制度は機能しません。
希望休の提出期限や決定方法を明確にし、店長自身も計画的に休みを取る必要があります。

仕込みや清掃の手順を見直し、営業時間外の作業を減らすことも有効です。
作業をマニュアル化すれば、ベテランスタッフにしかできない仕事が減り、シフトを組みやすくなります。

給与と評価制度を整備する

大幅な賃上げが難しい場合でも、評価基準を明確にすることは可能です。
「何年働いたか」だけでなく、習得した業務や店舗への貢献を評価し、昇給や手当に反映させます。
例えば、発注業務を担当できる、後輩を教育できる、クレームの一次対応ができるなど、具体的な項目を設定すると、評価の納得感を高めやすくなります。

評価内容は本人に伝え、次に何ができるようになれば昇給や昇格につながるのかを説明しましょう。
基準を作るだけでなく、定期的に運用することが重要です。

教育手順と相談相手を決める

新人教育では、入社初日からすべてを覚えてもらうのではなく、1週間、1か月、3か月などの段階に分けて目標を設定します。
業務チェックリストを用意し、「教えたかどうか」ではなく「本人が一人でできるかどうか」を確認しましょう。
教える人によって説明が変わらないよう、基本的な手順を統一することも必要です。

店長とは別に、年齢や立場の近い先輩を相談相手として決める方法もあります。
業務上の質問だけでなく、人間関係や働き方の悩みを早い段階で把握できれば、退職を決める前に対応できます。

定期的な面談で不満を早期に把握する

年に一度の評価面談だけでは、スタッフの変化を十分に把握できません。
入社直後は1週間後、1か月後、3か月後など、短い間隔で面談を行うとよいでしょう。
面談では「困っていることはないか」と聞くだけでなく、教わっていない業務、負担を感じる時間帯、シフトへの希望などを具体的に確認します。

サンクスカードや社内チャットを利用し、スタッフ同士の感謝を伝える仕組みを作る方法もあります。
ただし、制度を導入するだけでは定着しません。店長や責任者が率先して使い、日常的に貢献を認めることが大切です。

採用時に仕事内容と条件を正確に伝える

早期離職を減らすには、採用段階でのミスマッチ防止も欠かせません。
応募を増やすために仕事の良い面だけを伝えると、入社後に「聞いていた話と違う」と感じられる可能性があります。
勤務時間、休日、給与、具体的な仕事内容に加え、繁忙時間帯や入社後の教育方法も説明しましょう。

面接では、店舗側が応募者を選ぶだけでなく、応募者にも自分に合う職場かどうかを判断してもらう必要があります。
可能であれば店内見学やスタッフとの顔合わせを行い、働く環境を理解したうえで入社してもらうことが重要です。

ITツールで店舗業務を効率化する

シフト管理や勤怠管理を紙や表計算ソフトだけで行っていると、シフト希望の転記や修正、勤務時間の集計に手間がかかります。
シフト管理ツールを活用すれば、スタッフがスマートフォンから希望を提出し、確定したシフトを共有できるようになります。
勤怠管理システムで残業時間や連続勤務を把握しやすくすれば、負担が集中しているスタッフにも早く気づけるでしょう。

モバイルオーダーや予約管理、在庫管理などの仕組みも、店舗によっては業務負担の軽減につながります。
ただし、ツールの導入自体を目的にせず、どの作業に時間がかかっているのかを確認したうえで選ぶことが大切です。

飲食店は離職率の改善が安定した経営につながる

厚生労働省の調査によると、「宿泊業,飲食サービス業」の離職率は25.1%で、全産業平均を大きく上回っています。
特にパートタイム労働者や新卒者の離職率が高く、採用後の定着は多くの飲食店に共通する課題です。

離職を防ぐには、給与や休日だけを見直せばよいわけではありません。
教育体制、情報共有、評価制度、採用時の説明など、スタッフが働き続けるうえで不安を感じる部分を一つずつ改善する必要があります。
また、定着率を高めるには、店舗の仕事内容や働き方に合う人を採用することも重要です。

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