飲食店の社員はなぜ異動が多い?頻度・理由・転勤のない働き方まで解説

「また異動か…」
「次は自分の番かもしれない」
飲食チェーンで働く社員や店長にとって、異動や転勤は身近な問題です。
2024年4月から労働条件の明示ルールが変わり、労働契約の締結時などに「就業場所の変更の範囲」を示すことが義務化されました。
自分がどの範囲まで異動の対象になり得るのかを、労働条件通知書や雇用契約書で確認しやすくなりました。
本記事では、飲食店で異動が多い理由や頻度の目安、異動・転勤を拒否できるケース、勤務地に振り回されない働き方の選択肢を解説します。

目次

飲食店(チェーン店)で社員の異動が多いのはなぜ?

会社側が異動を行う目的を知れば、自分が異動する理由や背景もわかりやすくなります。
まずは「なぜ飲食店では異動が多いのか」という疑問から解説します。

店舗運営の効率化・人材育成のため

多店舗を展開するチェーンでは、繁忙店舗への人員補強や、社員に複数店舗の運営を経験させる人材育成が、異動の主な目的です。
社員は将来的に店長やエリアマネージャーとして複数店舗を見る立場になるため、駅前の高回転店、郊外のファミリー層中心店、大型店、小型店などの異なるタイプの店舗を若いうちに経験させることに意味があります。
客層もオペレーションも異なる環境を経験することで、どのような店舗に配属されても対応できる力が身につきます。
「異動が多い=使い勝手のいい人員扱いされている」とは限らず、育成計画の一環であるケースが多いです。

属人化・不正防止のため

同じ人が同じ店舗・同じポジションに長くとどまると、その人にしか分からない業務が増えていきます。
発注先とのやり取りの経緯や、レジ締めの独自ルール、常連客への対応などを特定の人しか把握していないと、その担当者が休んだだけで店が回らなくなる可能性があります。
加えて、現金管理や発注・棚卸しなどは、長期間チェックされない状態が続くと、不正のリスクが高まりやすいです。
定期的に人を入れ替えることは、担当者を疑うためではなく、誰か一人に依存しない体制をつくるための仕組みだと理解しておくと、異動の受け止め方も変わってきます。

売上不振店舗のてこ入れ・適材適所の配置

経営戦略として異動が使われることもあります。
業績が振るわない店舗には、立て直しの実績がある社員を配置し、新規出店の際には評価の高い社員を立ち上げメンバーに抜擢することがあります。
いずれも、その人の経験や適性を踏まえた人員配置です。
不振店への異動が、必ずしも降格や評価の低下を意味するわけではありません。
難易度の高い店舗を任される背景に、会社からの期待がある場合もあります。立て直しに成功すれば、その経験を次のキャリアで実績として示せる可能性があります。
異動を告げられたら、まずはその店舗が置かれている状況を確認してみてください。

結婚・介護など個人的事情による配置転換

異動は会社側の事情によるものばかりではありません。
結婚や配偶者の転勤による転居、子どもの就学、親の介護などの事情を会社に伝えたことで、自宅に近い店舗へ配置転換される場合もあります。
実際、育児・介護休業法では、就業場所の変更を伴う配置の変更を行う際、それによって育児や介護が困難になる労働者がいる場合には、その状況に配慮しなければならないと定められています。
事情がある場合は、我慢して黙っているより、早めに上長や人事へ共有しておくのもひとつです。

飲食店の社員はどれくらいの頻度で異動する?

理由がわかったところで、次に気になるのが頻度です。
飲食業界に特化した公的な統計を確認できなかったため、ここではQ\&Aサイトや企業クチコミに寄せられた事例をもとに、参考として整理します。

一般的な異動サイクルの目安(半年〜3年程度)

Q\&Aサイトや企業クチコミには、半年〜3年程度で異動したという事例が多く見られます。
役職ごとの異動頻度は、会社によって異なります。
ただし、これはQ\&Aサイトや企業クチコミに寄せられた事例をまとめたものであり、業界全体の傾向を示す数字ではありません。
同じ会社でも役職やエリアによって差があるため、「自分の会社はどうなのか」を先輩社員に聞いてみるとよいです。

チェーンの規模・業態による違い

異動の頻度は、会社の規模と店舗展開の仕方に左右されます。
全国に数百店舗を展開する大手チェーンでは、エリアをまたぐ転勤も含めて人事異動が活発になりやすいです。
一方、特定の県内だけで数店舗を運営する地域密着型のチェーンでは、そもそも異動先が限られるため頻度は下がります。
1店舗のみを運営する個人店であれば、基本的に店舗間の異動はありません。
就職・転職の際は、「店舗数」「出店エリアの広さ」「転勤の有無」の3つを確認しておくと、入社後のイメージがしやすくなります。

短期間(数か月)で異動になるケースもある

まれに、2〜3か月という短いスパンで異動が続くこともあります。
多くは急な欠員の補充や、新規出店ラッシュに伴う人員の再配置など、会社側の事情によるものです。
ただし、あまりに頻度が高い場合は、人員体制そのものに無理がある可能性も考えられます。
落ち着いて仕事を覚える前に次の店へ移る状態が続けば、スキルの積み上げも難しくなります。
異動が続いていると感じたら、その理由を上長に確認し、今後の見通しを聞いておくとよいです。

飲食店の異動・転勤は拒否できる?知っておきたい法律知識

「打診されたら断れないのか」と不安に感じる社員も少なくありません。
ここでは法律と判例の観点から、異動命令の仕組みと拒否できる可能性のあるケースを整理します。

就業規則・雇用契約書に定めがあれば、原則として異動命令が認められる

就業規則や雇用契約書に配置転換・転勤に関する定めがあり、勤務地を限定する合意がない場合、会社には原則として異動を命じる権限があると考えられています。
ただし、異動命令が必ず認められるわけではありません。
ここで確認しておきたいのが、2024年4月に施行された労働条件明示ルールの改正です。
すべての労働契約の締結時に、「雇い入れ直後」の就業場所・業務だけでなく、その「変更の範囲」を明示することが義務づけられました。
つまり、自分がどこまで異動の対象になるのか、労働条件通知書や雇用契約書で確認しましょう。
参考:厚生労働省|令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

育児・介護などの事情がある場合は会社に配慮を求められる

会社に転勤を命じる権限があっても、業務上の必要性や本人が受ける不利益によっては、命令が無効になる場合があります。
最高裁は、東亜ペイント事件(昭和61年7月14日判決)で、業務上の必要性がない場合や不当な動機・目的がある場合、労働者に通常受け入れるべき範囲を著しく超える不利益を負わせる場合などには、転勤命令が権利の濫用として無効になり得るとの判断を示しました。
加えて、育児・介護休業法第26条では、配置変更によって育児や介護が難しくなる労働者に対し、会社が配慮するよう定められています。
該当しそうな事情があるなら、感情ではなく事実として具体的に伝えることが大切です。
参考:厚生労働省|転勤に関する裁判例

アルバイト・パートの異動・転勤の扱いは正社員と異なる

アルバイトやパートは、勤務地や職種を限定して採用されているケースも多くあります。
募集時に「〇〇店ホールスタッフ」として応募し、その条件で契約している場合、正社員のように広い範囲で異動・転勤することは基本的にありません。
契約上、勤務地が特定の店舗に限定されている場合、会社が本人の同意なく勤務店舗を変更することは難しいと考えられます。
ただし、系列店へのヘルプを依頼される場面はあります。
この場合、交通費や移動時間の扱いを事前に確認し、納得したうえで応じるようにしましょう。

バイト先の店長が急に変わったときに知っておきたいこと

飲食店では、店長が突然交代することがあります。
ここではアルバイト目線での店長交代について解説します。

店長交代のよくある理由

店長が変わる理由はさまざまで、ネガティブなものとは限りません。
昇進してエリアマネージャーになった、不振店の立て直しを任されて異動した、新店舗の立ち上げに抜擢された、結婚や介護で勤務地を変えた、本人の希望で現場から本部へ移ったなど、さまざまなケースが考えられます。
会社は個人の事情を店内で公表しないため、突然いなくなったように見えても、会社の人事計画に基づく異動である可能性があります。

店長が変わることで職場の雰囲気はどう変わる?

店長が変われば、シフトの組み方、教育の丁寧さ、クレーム対応の方針、店内の雰囲気まで変わることがあります。
前の店長のやり方に慣れているほど戸惑いは大きいものですが、交代直後は新店長も店の状況を把握している途中です。
この時期に「以前はこのように対応していました」と伝えれば、新店長が店舗の状況を把握するための情報になります。
また、シフトの融通が利かなくなるなど働き方に実害が出た場合は、早めに相談したほうが解決は早くなります。

異動・転勤に不安を感じたら?後悔しない選択のためにできること

異動や転勤に不安を感じている社員が、後悔のない選択をするために今からできることを解説します。

異動の目的・条件を上司や人事に確認する

異動の打診を受けたら、まずは目的や条件を確認しましょう。
確認したいのは、異動の目的(育成なのか、欠員補充なのか、立て直しなのか)、想定される期間、通勤時間と交通費の扱い、住宅手当や引っ越し費用の有無、給与や役職の変化、そして次の異動の予定です。
これらを聞くこと自体は失礼にあたりません。
条件を確認してから回答することで、本人も会社も認識のずれを減らせます。
口頭で聞いた内容は、メールなど文字に残る形でも確認しておくと安心です。

「転勤のない働き方」という選択肢を知っておく

そもそも異動や転勤の範囲が広い働き方そのものが合わない、と感じることもあるはずです。
その場合は、勤務地限定社員(エリア職)の制度がある会社や、転勤のない地域密着型のチェーン、店舗数を絞って運営している企業を選ぶという選択肢もあります。
前述のとおり2024年4月以降は「就業場所の変更の範囲」が契約時に明示されるため、求人情報や労働条件通知書で、転勤の可能性や勤務地の変更範囲を確認しやすくなりました。
求人票と労働条件通知書の記載を突き合わせて、納得できる範囲かどうかを判断しましょう。

飲食店社員の異動でよくある質問(FAQ)

飲食店社員のよくある悩みと、その回答を紹介します。

飲食店の店長は何年で異動しますか?

Q\&Aサイトや企業クチコミに寄せられた実体験を見る限り、半年〜3年程度で異動したという事例が見られます。
店長が1〜2年で異動したという声もありますが、あくまで個別事例です。
ただし、チェーンの規模や出店エリアの広さ、役職によって異なるため、一概には言えません。
自社の傾向は、先輩社員や上長に直接確認しましょう。

店長の異動を事前に知る方法はありますか?

会社が正式に発表するまで、アルバイトや一般社員が確実に知ることは基本的にありません。
人事情報は本人と一部の管理職にしか共有されないためです。
引き継ぎ資料の作成が増えたり、エリアマネージャーの来店頻度が上がったりすることで異動を推測できる場合もありますが、それだけで判断することはできません。
噂として広めず、正式な発表を確認してください。本人に確認しても、発表前は答えられないことがあります。

飲食店の異動を拒否したら解雇されますか?

異動を拒否したからといって、すぐに解雇されるわけではありません。
ただし、有効な異動命令を正当な理由なく拒否した場合は、就業規則などに基づく懲戒処分の対象となる場合があります。
一方で、育児や介護など「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」がある場合は、拒否が認められる可能性があります。
いきなり断るのではなく、まずは事情を具体的に伝えて相談することが大切です。
話し合いで解決しない場合は、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーで無料の相談も受けられます。

飲食店社員は異動の仕組みを知っておこう

飲食店の社員や店長の異動は、単なる人員調整だけを目的に行われるものではありません。
人材育成や店舗運営の効率化、属人化の防止など、さまざまな理由によって実施されます。
異動や転勤への不安が大きく、勤務地を選べる環境で働きたいと考えている方には、飲食専門の求人サイト『グルスタ』がおすすめです。
グルスタには、転勤のない求人や勤務地を限定できる求人を含め、さまざまな飲食店の正社員求人が掲載されています。
自分に合った働き方を選びたい方は、グルスタで理想の職場を探してみましょう。