「スタッフがすぐ辞める」
「本部からは数字で詰められる」
「自分の休みは後回し」
飲食店の店長になってから、このような状態が当たり前になっていませんか。
厚生労働省の「過労死等防止対策白書」では、外食産業の調査対象職種のうち、週平均労働時間が60時間以上の人の割合は店長が特に高いと報告されています。
いま感じているつらさには、個人の能力だけでなく、労働環境が関係している可能性があります。
本記事では、店長がぶつかりやすい悩みを整理したうえで、明日から試せる向き合い方と、それでも変わらないときのキャリアの選択肢まで解説します。
飲食店店長によくある悩み・あるあるを整理する
まずは店長が直面しやすい悩みを4つのタイプに整理します。
自分の状況がどれに当てはまるかを確認してみてください。
①人手不足・スタッフ管理に関する悩み
店長が抱える悩みの一つが、人に関するものです。
シフトの穴を埋めるために自ら現場に入り続ける、せっかく採用しても3か月で辞めてしまう、スタッフ同士の人間関係の仲裁に時間を取られるなど、一度始まるとなかなか終わりが見えません。
厄介なのは、人手が足りない店ほど店長が現場作業に張りつくことになり、採用や教育などの「人手不足を解消するための仕事」に手が回らなくなる点です。
結果として欠員が埋まらず、また自分がシフトに入ることになります。
まずは、この悪循環に陥っていないかを確認してみましょう。
②長時間労働・自分の労働環境に関する悩み
開店前の仕込みから閉店後のレジ締め・発注まで、店長の拘束時間はどうしても長くなります。
厚生労働省の「過労死等防止対策白書」によれば、外食産業では、週平均労働時間が60時間以上の人の割合が特に高い職種は店長で、29.0%でした。
およそ10人に3人が該当します。
スタッフの希望シフトを優先した結果、自分の休みだけが削られるという点も問題です。
長時間労働は本人の努力不足ではなく、人員体制や業務分担に原因がある場合もあります。
③本部・オーナーと現場の"板挟み"に関する悩み
本部からは原価率の改善と売上目標を求められる一方、現場のスタッフからは、人を増やしてほしい、シフトを楽にしてほしいという要望が出ます。
こうした相反する要求の間に立つのが店長です。
本部側の要求を優先すれば現場の信頼を失い、現場側の要望を優先すれば本部からの評価が下がる可能性があります。
どちらの要求にも十分に応えられない状態が続くと、判断するたびに罪悪感を抱きやすいです。
さらに、現場ではスタッフや顧客への対応も求められるため、店長が複数の立場からの要求を一人で受け止めるケースもあります。
④孤独感・相談相手がいないという悩み
スタッフに囲まれていても、最終的に判断し責任を負うのは店長一人です。
アルバイトに弱音を吐けば不安を与えてしまい、本部に相談すれば評価に響くかもしれません。
そう考えるうちに、誰にも悩みを話せない状態になっていきます。
特に小規模店では、店長が現場業務と管理業務を兼ねるため、同じ立場で話せる相手が社内にいないことも珍しくありません。
孤独感は自覚しにくく、気づかないうちに冷静な判断が難しくなっている場合もあります。
なぜ飲食店の店長はここまで悩みを抱えやすいのか
店長が悩みを抱えやすいのは、飲食店ならではの働き方や業務の進め方が関係しています。
ここでは、悩みが生まれやすい根本的な理由を3つに分けて解説します。
店舗運営のほぼすべてが店長一人に集約される構造
売上管理、シフト作成、採用、教育、発注、在庫管理、クレーム対応、設備トラブルの一次対応まで、店舗で起きることのほとんどを店長が判断しなければなりません。
職能ごとに部署が分かれている企業の管理職と違い、店長は専門外の業務まで丸ごと引き受ける「なんでも屋」になりがちです。
ひとつひとつは大きな仕事でなくても、業務の種類が多く、店長の負担は大きくなります。
負担の原因が、業務量だけでなく「業務の切り替えの多さ」にある場合もあります。
マネジメントを体系的に学ぶ機会がないまま管理職になる
多くの店長は、現場スタッフとしての実績を評価されて昇格します。
調理や接客のスキルと、人を育てて組織を動かすスキルは異なります。
しかし、管理職向けの研修がない企業も少なくありません。
結果として、自分のやり方をそのまま部下に求めてしまい、思うように伝わらず、指導に悩むことがあります。
うまくいかないのは、必要な指導を受けていないためだと分かれば、自分だけを責めずに済みます。
店長の言動がきつくなってしまう背景
店長が感情的に怒鳴る、日によって態度が変わる、などの話はよく聞きます。
もちろん個人の資質による部分もありますが、慢性的な睡眠不足や精神的な余裕のなさも原因のひとつです。
疲労が蓄積すると、相手に配慮して言葉を選ぶ余裕がなくなることがあります。
もし最近、自分の言い方がきつくなっている自覚があるなら、まずは自分の勤務時間を、感覚ではなく数字で振り返ってみてください。
新任店長が特につまずきやすいポイント
店長になったばかりの時期は、悩みの種類や深さも変わります。
新任店長がつまずきやすい代表的な3つのポイントを解説します。
本部からの情報量とスタッフへの指示出しのギャップ
新任店長のもとには、キャンペーン告知、衛生管理、シフト提出、原価改善策と、大量の連絡が本部から届きます。
これを噛み砕いてスタッフに伝えるのが店長の役割ですが、経験が浅いうちは何を優先すべきかの判断がつきません。
その結果、すべてを同じ優先度で伝えて現場を混乱させたり、必要な情報を伝え忘れて本部から指摘を受けたりすることがあります。
「今週、特に徹底すること」を一つに絞る習慣をつけるだけでも、伝わり方は変わります。
「自分がやった方が早い」からのキャパオーバー
教えるより自分でやったほうが早いと考え、この判断を繰り返すうちに、業務が店長一人に集まっていきます。
短期的には業務が回っても、休憩を削ったり休日出勤で補ったりする働き方が当たり前になり、数か月で手が回らなくなります。
厄介なのは、抱え込むほどスタッフが育たず、さらに任せられなくなる点です。
最初の1か月は自分でやったほうが早くても、業務を任せてスタッフが育てば、数か月後には負担が軽くなる可能性があります。
数か月先を見据えて業務を任せられるかどうかが、負担を減らす分かれ目になります。
数字への責任の重さに慣れていない
これまでは意識する機会の少なかった売上、原価率、人件費率、客単価などの数字が、店長になると評価に直接関わります。
何をすれば改善できるのか分からないまま「今月も未達」と言われ続けると、精神的な負担を感じます。
まずはすべての数字を同時に追うのではなく、自店で改善しやすい項目を一つに絞りましょう。
改善の手応えを得られる項目が一つ見つかると、数字への苦手意識も薄れます。
悩みを抱え込みすぎているサインとメンタル不調のリスク
我慢を続けた結果、心身の不調につながることもあります。
見逃してはいけないサインと、早めに使える相談先を紹介します。
眠れない・食欲がないなど、心身の不調が疑われるサイン
強いストレスが続くと、寝つけない、夜中に何度も目が覚める、食欲が湧かない、休日でも仕事のことが頭から離れないなどの変化が現れます。
このような不調が続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、気持ちの問題として片づけず、早めに医療機関や相談窓口を利用してください。
厚生労働省の外食産業に関する調査では、重度の抑うつ・不安障害が疑われる人の割合は、店長で13.5%、エリアマネージャー・スーパーバイザー等で15.0%と報告されています。
一人で抱え込む前にできるセルフチェックと相談先
「いつからこの状態が続いているか」
「この1か月、誰かに悩みを話せたか」
この2つを振り返るだけでも、自分の状況を客観視できます。
相談先は社内だけではありません。
厚生労働省の「こころの耳」では、働く人やその家族などを対象に、匿名・無料の電話、SNS、メール相談を受け付けています。
労働時間や休日などの労働条件に問題がある場合は、都道府県労働局や労働基準監督署内などに設置された総合労働相談コーナーでも無料で相談可能です。
早い段階で外部に相談することで、問題を一人で抱え込まずに済みます。
「甘え」ではなく「働く環境」の問題であるケースも多い
一人で抱え込む店長ほど、「自分の力不足だ」と考えてしまいます。
しかし同じ店長職でも、ヘルプ要員の有無、本部のサポート体制、店舗数に対する社員数によって、負担の大きさは違います。
前の店では回っていたのに今の店では回らないという場合、変わったのはあなたではなく環境です。
原因を自分の内側だけに探し続けると、本来変えられる部分まで見えなくなります。
一度「これは環境要因ではないか」と考えてみましょう。
飲食店店長の悩みへの向き合い方・対処法
ここからは、明日から試せる具体的な対処法です。
どの対処法にも共通するのは、一人で抱え込まず、周囲に頼れる体制を整えることです。
すべてを完璧にこなそうとしない、任せる勇気を持つ
業務を任せることに不安を感じるのは、失敗した際に自分が責任を負う立場だからです。
だからこそ、いきなり大きな業務を任せるのではなく、失敗しても影響の小さい仕事から始めます。
たとえば、発注業務のうち消耗品だけを任せる、開店準備のチェックリストを担当してもらうなど、業務を小さく分けます。
任せる際は手順書を用意し、判断に迷ったときの連絡先を明示しておくと、ミスを防ぎやすいです。
任せる業務が定着すれば、その分、自分の業務時間の確保にもつながります。
社内外の相談先を確保しておく
社内では、エリアマネージャーだけでなく、同期や近隣店舗の店長など、同じ立場で話せる相手を見つけておくと相談しやすくなります。
評価に直結しない相手だからこそ話せる内容があるためです。
それも難しい場合は、前述の総合労働相談コーナーやこころの耳などの外部窓口を使ってください。
複数の相談先があると分かっているだけでも、心理的な負担を軽減できることがあります。
深刻な状態になる前から、相談先を利用して構いません。
今の職場が「店長を孤立させない仕組み」を持っているか見直す
店長会議が情報伝達だけで終わっていないか、欠員時のヘルプ要員が確保されているか、店長自身の勤怠が正しく記録されているかを確認してみましょう。
この3点から、店長を孤立させない体制が整っている会社かどうかを判断できます。
仕組みのある会社では、同じ悩みでも一人で抱える時間を短くできるためです。
確認してみて「どれも当てはまらない」場合は、個人だけでなく、組織側にも原因がないか見直してみましょう。
それでもつらいなら?店長としての「その後」のキャリアを考える
対処法を試しても状況が変わらないなら、環境そのものを変えるのも一つの選択です。
店長経験を活かす3つの選択肢を紹介します。
今の会社・店舗で環境改善を求める
最初の選択肢は、社内で交渉することです。
その際は、「きつい」「もう限界です」という気持ちだけでなく、勤務状況を示す数字も添えると、問題の深刻さが伝わりやすくなります。
直近3か月の自分の労働時間、欠員数、欠員を補うために勤務した時間などの数字を揃え、「この体制のままだと何が起きるか」を具体的に示すほうが伝わります。
改善が難しい場合でも、会社の回答は、今後も働き続けられるかを判断する材料になります。
同じ店長職のまま、働きやすい他店・他社へ移る
店長という仕事自体は嫌いではないという人は少なくありません。
その場合は、職種を変えず、より働きやすい会社や店舗へ移ることも選択肢の一つです。
休日数、本部のサポート体制、1店舗あたりの社員数、店長に与えられる裁量は企業によって異なります。
同じ「店長」でも、働き方や業務範囲はさまざまです。
求人を見る際は、給与だけでなくこれらの条件を必ず確認してください。
店長経験を活かして本部職・独立など次のキャリアに進む
店長として身につけた採用・育成・数字管理・クレーム対応の経験は、そのまま次のキャリアにつながります。
エリアマネージャーやスーパーバイザーなどの本部職、人事・研修部門、フランチャイズ本部の運営支援職、そして将来的な独立開業まで、選択肢は思っているより広くあります。
今の悩みを「向いていない証拠」と決めつけず、これまでに得た経験や身につけたスキルを整理すると、今後の方向性を考えやすいです。
飲食店店長の悩みでよくある質問(FAQ)
飲食店店長のよくある悩みと、その回答を紹介します。
飲食店の店長が抱えやすい悩みは何ですか?
人手不足に起因するスタッフ管理や、それに伴う長時間労働などです。
シフトの穴を店長自身が埋めることが当たり前になり、休みが取れない状態に陥るケースが多くみられます。
また、本部の目標と現場の要望に挟まれる板挟みの悩みもあります。
いずれも個人の努力だけでは解消しにくく、店舗の人員体制や会社のサポート体制そのものに原因があることが多いです。
飲食店店長はうつ病になりやすいって本当ですか?
一概にはいえませんが、長時間労働や強いストレスが続く場合は、心身の不調に注意が必要です。
厚生労働省の「令和7年版過労死等防止対策白書」では、外食産業では、1か月に80時間以上の時間外労働を行った人が一定数いることが示されています。
職種別では、週平均労働時間が60時間以上である人の割合が、店長で29.0%、エリアマネージャー・スーパーバイザー等で24.0%と報告されています。
眠れない、食欲がないなどの状態が続く場合は、早めに医療機関や相談窓口を利用してください。
飲食店店長の悩みは年収を上げれば解決する?
一部は解決しますが、根本原因が労働時間やサポート体制の不足にある場合、年収だけを上げても状況は変わりません。
むしろ、高い年収の裏側で拘束時間がさらに伸びる場合もあります。
転職を考える際は、提示年収と想定労働時間から、おおよその時間単価を計算しておくと、待遇を比較しやすくなります。
待遇と働き方は、必ずセットで確認することが大切です。
飲食店店長の悩みを整理して働き方を考えよう
飲食店の店長は、店舗の売上やスタッフを管理するだけの仕事ではありません。
人手不足への対応やスタッフの育成、本部との調整など、店舗運営に関わる幅広い業務を担う役割です。
店長としての経験を活かしながら、より働きやすい環境で正社員として活躍したい方には、飲食専門の求人サイト『グルスタ』がおすすめです。
グルスタには、店長・店長候補の求人をはじめ、これまでの経験を活かしてキャリアアップを目指せるさまざまな飲食店の正社員求人が掲載されています。
現在の働き方に悩んでいる方は、飲食業界に特化した求人サイトグルスタで、自分に合った職場を探してみましょう。
