飲食店の厨房は、コンロやフライヤーなどの熱源や蒸気、換気の状況によって、ホールよりも暑くなる場合があります。
忙しい時間帯に火の前で動き続け、休憩に入るころには汗で服がびっしょりになる日もあるでしょう。
「厨房は暑くて当たり前だから仕方ない」と思っていても、毎日のように強い暑さの中で働いていると、「このまま働き続けて大丈夫なのか」と不安になるかもしれません。
自分でできる暑さ対策で乗り切れるのか、それとも店舗の設備や働き方に問題があるのかを分けて考えるのが重要です。
暑さによる負担が続いているなら、我慢するだけでなく、職場でできる対策や今後の働き方を考える必要があります。
この記事では、飲食店の厨房が暑くなる原因や暑さ対策、熱中症への対応、店舗へ相談するときのポイント、転職を検討する目安を解説します。
飲食店の厨房が暑いのはなぜ?原因と危険な暑さの目安

厨房の暑さは、設備や構造、服装、作業状況などによって変わります。
厨房が暑くなる主な原因と、作業環境が危険な暑さになっていないかを確認する目安を解説します。
飲食店の厨房で暑さを感じやすい4つの原因
飲食店の厨房は、調理機器から出る熱だけでなく、換気や厨房の構造、働くときの服装など、複数の理由で暑さを感じやすくなります。
主な理由は、以下の4つです。
主な理由 | 詳細 |
コンロやフライヤーなどの熱源と蒸気 | コンロやフライヤー、オーブンなどを使う厨房では、調理機器から熱が発生します。鍋や炊飯器などから出る蒸気も加わるため、厨房内に熱や湿気がこもりやすくなります。 |
排気と給気のバランス | 換気扇で熱気を排出していても、外から取り込む空気が不足していると、十分に換気できない場合があります。熱気や湿気を外へ逃がせる状態になっているかを確認します。 |
厨房の構造 | 厨房が壁や間仕切りで囲まれていると、ホールの冷気が届きにくくなります。エアコンを使用していても、厨房の奥や熱源の近くまで十分に冷えない場合があります。 |
服装や作業量 | 長袖のコックコートや帽子を着用したまま動き続けると、体に熱がこもりやすくなります。忙しい時間帯に休憩や水分補給を十分に取れない場合は、暑さによる体への負担も大きくなります。 |
自分の職場ではどの原因が当てはまるのかを確認すると、必要な暑さ対策を考えやすくなります。
暑さ指数(WBGT)で確認する危険度と厨房温度の目安
厨房の暑さによる危険度は、気温だけでは判断できません。
湿度や風、周囲から受ける熱なども含めて確認する必要があります。
暑さの目安として使われるのが、暑さ指数(WBGT)です。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、日常生活に関するWBGTの目安を以下のように示しています。
- 31以上:危険
- 28以上31未満:厳重警戒
- 25以上28未満:警戒
- 25未満:注意
ただし、職場では作業内容や暑さへの慣れ具合によって基準値が異なります。
厨房のWBGTを測定し、作業内容とあわせて確認しましょう。
また、厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、調理場を湿度80%以下、温度25℃以下に保つことが望ましいとされています。
このマニュアルは、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上提供する施設が対象です。
一般の飲食店に一律に適用される温度基準ではありませんが、厨房の環境を確認する際の参考になります。
厨房スタッフが自分でできる暑さ対策

厨房の暑さ対策には、店舗側で設備を見直すだけでなく、自分で取り入れられる方法もあります。
冷却グッズやウェア、水分補給など、勤務中に実践しやすい暑さ対策を紹介します。
ネッククーラーや冷却ベストを活用する
作業前や休憩中に体を冷やす方法として、ネッククーラーや保冷剤を入れられる冷却ベスト、冷たいタオルなどがあります。
厨房に入る前や休憩中に使い、暑さを感じたときに体を冷やしましょう。
長時間の勤務では、保冷剤の予備を用意しておくと、冷却効果が弱くなったときに交換できます。
一方で、厨房では火や刃物を扱うため、冷却グッズを選ぶときは動きにくくならないか、ひもや突起が作業の妨げにならないかを確認します。
また、食品を扱う厨房では、汗や汚れが付着したものを使い続けないよう、洗いやすさや交換のしやすさを確認し、清潔な状態を保てる冷却グッズを選びましょう。
使用できる冷却グッズや着用方法は店舗によって異なるため、勤務中に取り入れたい場合は、衛生面や制服のルールも含めて事前に店長や責任者へ確認してください。
ファン付き作業服や冷感インナーで暑さとムレを対策する
暑さやムレを軽減するには、通気性や透湿性のよい夏用コックコート、ファン付き作業服、吸汗速乾のインナーなどを取り入れましょう。
吸汗速乾のインナーは、汗を吸収して乾きやすいため、汗による衣服の張り付きやムレを抑えるのに役立ちます。
ファン付き作業服は、内蔵されたファンで衣服の中に風を送り、こもった熱を外へ逃がす仕組みです。
厚生労働省の「職場における熱中症防止のためのガイドライン」では、送風や送水によって身体を冷却する機能を持つ服は一定の効果があるとされ、ほかの対策と組み合わせることが望ましいとされています。
ただし、厨房では火や水、食品を扱うため、ファンやコードが作業の妨げにならないか、火気の近くで使用できるかなどを確認する必要があります。
制服やインナーのルールは店舗によって異なるため、使用できる種類や着用方法を店長や責任者へ確認してください。
水分・塩分を補給し、こまめに休憩を取る
厨房の暑さ対策では、冷却グッズやウェアだけでなく、熱中症を防ぐための水分・塩分補給や休憩も欠かせません。
のどが渇いてからではなく、作業前後や作業中の定期的な水分と塩分補給が重要です。
厚生労働省では、0.1〜0.2%の食塩を含む飲料や、ナトリウムを40〜80mg/100mL含むスポーツドリンクを、20〜30分ごとにコップ1〜2杯程度飲むことを目安として示しています。
ただし、経口補水液は塩分濃度が高いため、日常的な水分・塩分補給として定期的に飲む用途には向きません。
また、夏の初めなど、体が暑さに慣れていない時期は熱中症に注意が必要です。
暑さに体が慣れることを「暑熱順化」といい、数日間暑い環境から離れると、その効果が弱まる場合があります。
長期休暇明けなどは無理をせず、出勤前に睡眠や食事、体調を確認してから勤務しましょう。
忙しい時間帯に水分補給や休憩の時間を確保できない場合は、そのまま我慢せず、店長や責任者へ水分を取るタイミングや休憩の取り方を相談してください。
参考:厚生労働省|STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)
店舗で見直したい厨房の暑さ対策

冷却グッズや水分補給など自分でできる対策をしても暑さが続く場合は、厨房の設備や換気について店長や責任者へ相談してみましょう。
排気・給気の見直しや扇風機・サーキュレーターの設置、スポットクーラーの導入など、店舗側で検討できる3つの対策を紹介します。
まず見直したい排気・給気とグリスフィルターの清掃
エアコンを使用しても厨房が涼しくならない場合は、排気と給気の状態を確認しましょう。
換気扇のグリスフィルターに油汚れがたまると、空気を十分に排出できず、熱気や湿気が厨房内にこもる場合があります。
また、排気する量に対して外から取り込む空気が不足すると、給排気のバランスが崩れ、空調の効きに影響する可能性があります。
グリスフィルターの汚れが目立つ、以前より換気が弱くなったと感じるなどの変化に気づいたら、店長や責任者へ相談しましょう。
排気フードの清掃状況や給排気のバランス、換気設備の能力に問題がある場合は、店舗から専門業者へ点検を依頼する必要があります。
扇風機・サーキュレーターは設置場所を工夫する
扇風機やサーキュレーターは、厨房内の空気を循環させたり、作業中に風を送ったりする補助として使えます。
ただし、設置する場所や風向きによっては、コンロの火が乱れたり、ホコリが食材や調理器具へ飛散したりするおそれがあります。
また、扇風機やサーキュレーターだけで熱気を十分に外へ逃がせるとは限らないため、換気や空調の代わりではなく、補助的な使用と考えましょう。
設置する場合は、火や食材への影響だけでなく、スタッフの移動や作業の妨げにならないかも確認します。
置き場所や風向きに迷う場合は、自己判断で設置せず、店長や責任者へ相談してください。
スポットクーラーや冷風機は設置環境に合わせて選ぶ
熱源の近くを局所的に冷やす設備として、スポットクーラーがあります。
選ぶ際は、冷却能力や騒音、移動のしやすさに加え、排熱ダクトの有無を確認しましょう。
スポットクーラーは冷風と同時に本体から熱風も出るため、排熱を厨房の外へ逃がせる場所に設置する必要があります。
一方、気化熱を利用する冷風機は、湿度が高い環境では十分な冷却効果を得られない場合があります。
厨房内の湿度や設置場所を確認したうえで選ぶことが大切です。
スポットクーラーや冷風機を取り入れたい場合は、設置場所や電源、排熱方法などを確認したうえで、店長や責任者へ導入を相談しましょう。
2025年6月からの熱中症重篤化防止対策の義務化

2025年6月から、一定の条件に当てはまる作業では、熱中症の重篤化を防ぐための対策が事業者に義務付けられています。
どのような場合が対象になるのか、店舗に求められる対応や相談するときのポイントを解説します。
熱中症対策の義務化内容と対象となる条件
2025年6月1日に施行された労働安全衛生規則第612条の2では、熱中症のおそれがある作業をおこなう場合、事業者に以下の対応が義務付けられています。
- 熱中症の症状がある人や、熱中症が疑われる人を見つけた際の報告体制を整える
- 作業からの離脱や身体の冷却、医療機関の受診など、重篤化を防ぐための対応手順を決める
- 報告体制や対応手順を従業員へ周知する
対象となるのは、WBGTが28以上または気温が31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えておこなうことが見込まれる作業です。
飲食店の厨房も、実際のWBGTや気温、作業時間が条件に当てはまれば対象になります。
これらの措置を怠った場合は、6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
参考:厚生労働省|熱中症対策が義務化されます(令和7年6月1日施行)
厨房の暑さを相談するときの伝え方と相談先
厨房の暑さで体調に負担を感じている場合は、まず店長や責任者へ具体的な状況を伝えましょう。
「暑いので何とかしてほしい」と伝えるだけでなく、体調不良が起きた時間帯や作業場所、そのときの症状などを伝えると、状況を共有しやすくなります。
WBGT計が設置されている場合は、体調不良が起きた時間帯の数値もあわせて確認しておくと参考になります。
そのうえで、休憩や水分補給のタイミングを見直せないか、設備面で対応できることはないかなど、困っている内容に合わせて相談してください。
店長や責任者へ相談しても対応が進まず、暑さによる体調不良が続く場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーを利用する選択肢もあります。
暑い厨房でよくある熱中症のサインと応急処置

暑さ対策をしていても、勤務中に体調の異変を感じた場合は、無理に作業を続けないことが大切です。
厚生労働省では、めまいや立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛、頭痛、吐き気、倦怠感などを熱中症の症状としてあげています。
さらに症状が進むと、返事がおかしい、意識を失う、けいれんする、体が熱くなるなどの症状が現れる場合があります。
熱中症が疑われるときは作業を中断して涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて首の周りや脇の下、足の付け根などを冷やしてください。
意識がはっきりしていて自力で飲める場合は、水分と塩分を補給します。
呼びかけに反応しない、返事がおかしい、意識がないなどの症状がある場合や、自力で水分を取れない場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
身体を冷やしても症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。
また、勤務を終えたあとに症状が現れたり、帰宅後に体調が悪化したりすることもあります。
仕事が終わったからと安心せず、異変が続く場合は医療機関へ相談してください。
暑さが改善されない厨房は辞めてもいい?職場選びのポイント

暑さについて店長や責任者へ相談しても改善されず、体調への影響が続く場合は、今の職場で働き続けるか迷うこともあります。
転職を考える目安と、次の職場を探す際に確認しておきたい暑さ対策のポイントを紹介します。
暑さを理由に転職を検討する目安
厨房の暑さによる体調不良が続く、休憩や水分補給を十分に取れない、空調設備の故障が長期間放置されているなどの状態は、転職を検討する目安のひとつです。
店長や責任者へ相談しても必要な対策が進まず、同じ状況が続いている場合も、今の職場で働き続けるかを考える必要があります。
特に、勤務するたびに体調を崩す、暑さを理由に仕事を休むことが増えるなど、働き続けることで健康への影響が出ている場合は、無理を続けないことが大切です。
飲食店によって、厨房の空調設備や休憩の取り方、水分補給のルールなどは異なります。
今の厨房で働くことが難しくても、飲食業そのものが自分に合わないとは限りません。
現在の職場でできる対策を試しても改善が見られない場合は、別の飲食店の職場環境や勤務条件も比較してみましょう。
求人票や面接で確認したい暑さ対策
次の職場を探すときは、求人票や面接で厨房の暑さ対策を確認しておきましょう。
確認したい内容には、以下のようなものがあります。
- 厨房にエアコンやスポットクーラーなどの空調設備があるか
- 排気や換気の設備が整っているか
- 夏用のユニフォームやファン付き作業服を使用できるか
- 休憩場所や水分補給のルールが決まっているか
- WBGT計を設置しているか
- 熱中症が疑われたときの対応手順が決まっているか
求人票だけでは厨房の設備や暑さ対策まで分からない場合もあります。
記載がなければ、応募前の問い合わせや面接で「夏の厨房では、どのような暑さ対策をしていますか」と質問してみてください。
暑さ対策だけでなく、シフトや休憩の取り方など、自分が働くうえで重視したい条件もあわせて確認し、複数の求人を比較しましょう。
厨房の暑さが改善されないときは職場環境も見直そう

飲食店の厨房は、コンロやフライヤーなどの熱源、蒸気、換気の状況によって暑くなりやすい環境です。
まずは、冷却グッズや通気性のよいウェアを取り入れる、水分と塩分をこまめに補給するなど、自分でできる暑さ対策から試してみてください。
暑さが厳しい場合は、排気や給気、空調設備、休憩の取り方など、店長や責任者へ相談しましょう。
めまいや吐き気、強い倦怠感など熱中症が疑われる症状が出たときは、無理に作業を続けず、涼しい場所へ移動して身体を冷やし、必要に応じて救急要請や医療機関への相談をおこなってください。
店舗へ相談しても暑さ対策が進まない場合や、休憩や水分補給が十分に取れず体調不良が続く場合は、現在の職場で働き続けるかを見直す必要があります。
飲食店によって厨房の設備や休憩の取り方は異なるため、飲食業そのものが合わないと決めつけず、別の職場環境も比較してみましょう。
別の環境も比較したい方は、飲食専門の求人サイト『グルスタ』で求人を探してみてください。
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