飲食店で腰痛が起こる原因は?仕事中にできる対策や受診の目安を解説

飲食店では、長時間の立ち仕事や前かがみの姿勢、重い食材の持ち運びなどによって、腰に負担がかかる場合があります。

特に厨房では、調理や洗い物などで同じ姿勢が続き、勤務時間が長くなるにつれて腰に痛みや重だるさを感じることもあります。

仕事中に腰が痛くなっても、忙しくて休憩を取れなかったり、周囲に負担をかけたくないと感じたりして、無理をしてしまう人もいるかもしれません。

腰痛が続く場合は、仕事中の姿勢や作業環境を見直し、症状に応じて医療機関の受診や今後の働き方を検討しましょう。

この記事では、飲食店で腰痛が起こる原因や仕事中にできる対策、医療機関を受診する目安、休暇や労災保険の制度、職場を見直す判断基準を解説します。

飲食店の仕事で腰が痛くなる3つの原因

腰を押さえる女性

飲食店での腰痛には、仕事中の姿勢や動作、作業環境など、複数の要因が関係している場合があります。

飲食店で腰に負担がかかる主な原因を3つ紹介します。

長時間の立ちっぱなしで腰まわりの筋肉が疲れる

飲食店では、仕込みから営業、片付けまで立ち仕事が続く場合があり、長時間同じ姿勢を保つと腰まわりの筋肉に負担がかかります。

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」でも、長時間同じ姿勢で立ち続ける作業は、腰に過度な負担をかける場合があるとされています。

同じ姿勢での作業が長時間続く場合は、腰まわりの筋肉に負担がかかっていないか注意しましょう。

調理台の前で長時間作業したり、忙しい時間帯に休憩を取れなかったりすると、勤務後半に腰の痛みや重だるさを感じやすくなります。

作業台やシンクが低く、前かがみや中腰の姿勢が続く

作業台やシンクが自分の身長に対して低いと、前かがみや中腰の姿勢になりやすく、腰に負担がかかる場合があります。

同指針では、作業台の高さは肘をおよそ90度に曲げて作業できる位置が目安とされています。

ただし、厨房には高さを調整できない設備もあるため、従業員の身長に合わない場合は注意が必要です。

たとえば、作業台が低いと包丁を使う際に背中が丸まりやすく、シンクが低い場合は洗い物の間に前かがみの姿勢が続くこともあります。

このような姿勢が長時間続くと腰への負担が増えるため、作業台やシンクの高さが自分の身長に合っているか確認しましょう。

重い食材や寸胴の持ち上げ・運搬で腰に負担がかかる

飲食店の厨房では、米袋や食材ケース、水を入れた寸胴など、重い物を持ち上げたり運んだりする場面があります。

同指針では、重い物を急に持ち上げたり、持ったまま体をひねったりする動作が、腰への負担を大きくする要因としてあげられています。

たとえば、冷蔵庫の一番下の段から重い食材ケースを引き出すときや、体をひねりながら荷物を持ち上げるときは、腰に大きな負担がかかる場合もあるため、注意が必要です。

また、重い寸胴を持ったまま方向を変えたり、離れた場所へ運んだりするときも、腰への負担が大きくなります。

こうした作業が繰り返される場合は、持ち上げ方や運搬方法を見直し、できるだけ腰に負担をかけない工夫をしましょう。

飲食店で仕事中にできる腰痛対策4選

厨房で調理するスタッフ

飲食店で腰への負担を減らすには、作業環境や姿勢を見直し、適度に休息を取るなどの対策が必要です。

仕事中に取り組める腰痛対策を4つ紹介します。

作業台の高さを調整し、片足置き台を活用する

作業台やシンクの高さが合わない場合は、店長や責任者に相談し、設備を調整できるか確認しましょう。

作業台そのものの高さを変えられなくても、安定性や衛生面を確保したうえで、まな板の位置を高くするなどの方法があります。

また、長時間立って作業する場合は、片足置き台の活用も効果的です。

左右の足を交互に乗せて姿勢を変えると、腰への負担を軽減できる場合があります。

ただし、足台は滑りにくく安定したものを選び、厨房内の移動や作業の妨げにならない場所で使用してください。

設備の調整を相談する際は、「洗い物で前かがみの姿勢が続き、腰が痛くなります。作業台の高さや担当業務を調整できませんか」と具体的に伝えましょう。

重い物の持ち上げ方や運搬方法を工夫する

飲食店で重い食材や調理器具を扱う際は、持ち上げ方や運搬方法を工夫し、腰への負担を減らしましょう。

床に置かれた荷物を持ち上げるときは、膝を曲げてしっかりと腰を落とし、できるだけ荷物を体に近づけた状態で持ち上げます。

また、重い物を持ったまま腰をひねると負担が大きくなるため、方向を変える際は足を動かし、体全体の向きを変えるようにしてください。

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、人力のみで扱う重量について、満18歳以上の男性は体重のおおむね40%以下、女性は男性が取り扱える重量の60%程度を目安としています。

ただし、腰への負担は荷物の形状や持ち上げる姿勢などによっても異なるため、重量だけで安全性を判断するのは適切ではありません。

重い鍋や食材を運ぶ際は、台車を利用したり、複数人で作業したりすると、腰への負担を減らせます。

1人での運搬が難しい場合は無理をせず、店長や責任者に運搬方法や人員の調整を相談しましょう。

小休止とストレッチで腰への負担を減らす

仕込みや営業の合間に短い休息を取り、長時間同じ姿勢が続かないようにしましょう。

同指針でも、立ち作業中はおおむね1時間につき1〜2回の小休止を取り、脚の曲げ伸ばしなどで姿勢を変えるようすすめています。

ただし、調理中に持ち場を離れる場合は、火元の安全を確認し、必要に応じて責任者やほかの従業員と連携してください。

休息中には、ふくらはぎや太もも、お尻、股関節のまわりを軽く伸ばすストレッチを取り入れる方法もあります。

ストレッチは反動をつけず、呼吸を止めないようにしながら、痛みのない範囲でゆっくり伸ばしましょう。

すでに腰に強い痛みがある場合は無理にストレッチをせず、医師に相談してから取り組んでください。

靴や床マットを見直し、冷えによる負担を減らす

長時間の立ち仕事では、作業中に履く靴や床の硬さも、腰への負担に関係する場合があります。

同指針では、足に合った滑りにくい靴を選び、床が硬い場合はクッション性のある靴やマットを使用するようすすめています。

靴を見直す際は、サイズだけでなく、靴底が薄すぎたり硬すぎたりしないかも確認しましょう。

また、寒い環境での作業は腰痛を悪化させる場合があるため、足元を冷やさない工夫も必要です。

冷蔵庫や冷凍庫での作業が多い場合は、店舗の衛生ルールや作業環境に合わせて、防寒できる服装を検討してみましょう。

飲食店スタッフの腰痛が強く長引くときの対応

考え込む飲食店スタッフ

仕事中に腰を痛めた場合は、無理に作業を続けず、症状に応じて休息や医療機関への受診を検討しましょう。

急に腰を痛めたときの対応と、整形外科を受診する目安を解説します。

仕事中に急な腰痛が起きたときの対処法

厨房で急に腰を痛めた場合は、まず作業を中断し、店長や現場の責任者に症状を伝えましょう。

無理に作業を続けず、痛みが和らぐ姿勢を取り、必要に応じて整形外科を受診してください。

症状が落ち着いてきたら、長期間安静にし続けるのではなく、痛みの程度に合わせて少しずつ日常生活の動作を再開します。

ただし、重い物の持ち運びや長時間の立ち仕事など、腰に負担がかかる業務への復帰は慎重に判断する必要があります。

足のしびれや力の入りにくさがある場合は、無理に動かず、速やかに医療機関を受診してください。

腰痛で整形外科を受診する目安

腰痛に加えて以下のような症状がある場合は、放置せず早めに整形外科を受診しましょう。

  • 脚にしびれや力の入りにくさがある
  • 安静にしていても痛みが軽くならない
  • 痛みが次第に強くなっている
  • 発熱を伴っている
  • 夜間に強い痛みがある

特に、急に尿が出にくくなったり、尿漏れや排便の異常が現れたりした場合は、神経に問題が生じている可能性があるため、直ちに救急医療機関を受診してください。

日本整形外科学会の公式サイトでも、こうした症状がある場合は、速やかに整形外科を受診するようすすめています。

また、腰痛を繰り返している場合や、痛みによって仕事や日常生活に支障が出ている場合も、医師への相談を検討しましょう。

受診時には、いつから痛むのか、どのような動作で痛みが強くなるのか、しびれなどの症状があるかを具体的に伝えるのがポイントです。

過去の検査で異常が見つからなかった場合でも、痛みが続いたり症状が変化したりしたときは、再度受診して相談しましょう。

飲食店で腰痛を理由に仕事を休む場合の制度

調理器具を持つ飲食店スタッフ

腰痛によって仕事を休む場合は、勤務条件や痛みが生じた状況によって、年次有給休暇や労災保険などの制度を利用できる可能性があります。

パート・アルバイトにも適用される制度と、利用する際の注意点を解説します。

腰痛で仕事を休む場合の年次有給休暇の扱い

腰痛で仕事を休む場合は、勤務年数によって年次有給休暇を利用できる可能性があります。

年次有給休暇は、雇入れから6ヶ月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、パート・アルバイトにも付与されます。

勤続6ヶ月時点の付与日数は、週5日以上または週30時間以上勤務する場合は10日、週3日勤務で週30時間未満の場合は5日です。

ただし、付与日数は所定労働日数や勤続年数によって異なるため、給与明細や勤怠管理システムなどで有給休暇の残日数を確認しましょう。

腰痛による欠勤を年次有給休暇として扱いたい場合は、勤務先の申請方法を確認し、有給休暇を取得したい旨を伝えてください。

参考:厚生労働省|しっかりマスター有給休暇編

仕事が原因の腰痛は労災保険の対象になる場合がある

仕事中に重い物を持ち上げて腰を痛めた場合などは、労災保険の対象になる可能性があります。

労災保険は、パートやアルバイトを含めた労働者に適用される制度です。

仕事が原因の腰痛と認められた場合は、治療にかかる費用が補償されるほか、療養のために働けず、賃金を受け取れないときは休業補償給付の対象になります。

休業補償給付は原則として休業4日目から支給され、給付基礎日額の60%に加えて、20%の休業特別支給金も支給される仕組みです。

ただし、仕事中に腰痛が起きた場合でも、必ず労災保険が適用されるわけではなく、業務との関係などを踏まえて労働基準監督署が判断します。

腰痛が仕事中に発生した場合は、発生日時や作業内容、そのときの症状を記録し、店長や責任者に報告しましょう。

会社が労災申請に協力してくれない場合でも請求は可能なため、手続きが分からないときや労災の対象になるか判断に迷うときは、労働基準監督署へ相談してください。

飲食店スタッフが腰痛を理由に職場を見直す判断基準

店内で考え込む飲食店スタッフ

腰痛への対策を試しても症状が続く場合や、職場に相談しても作業環境が改善されない場合は、働く環境を見直す選択肢もあります。

職場を見直したほうがよい状況と、新しい求人を探す際に確認したいポイントを紹介します。

職場を見直したほうがよい3つのサイン

以下のような状況が続いている場合は、職場環境の見直しを検討しましょう。

  • 作業姿勢や業務内容を見直しても、腰痛を繰り返している
  • 作業台や設備の改善を相談しても、対応してもらえない
  • 人手不足によって休憩を取れず、腰への負担が大きい作業が続いている

厚生労働省の指針では、作業台の高さ調整や補助機器の導入、小休止の確保など、事業者による職場環境の改善が求められています。

こうした問題は従業員個人の工夫だけでは改善が難しいため、店長や責任者に具体的な作業内容や腰痛の症状を伝え、対応を相談する必要があります。

相談しても改善が見込めず、腰痛によって仕事や日常生活に支障が出ている場合は、別の職場を検討するのもひとつの方法です。

腰への負担が少ない職場を探す際のチェックポイント

飲食店の作業環境や腰痛への配慮は、店舗によって異なります。

求人票だけでは設備や業務分担が分からない場合もあるため、面接時に具体的な働き方を確認しましょう。

特に確認しておきたいのは、以下の6項目です。

  • 作業台や洗い場の高さを調整できるか
  • 足台やクッション性のあるマットを使用できるか
  • 重い荷物の運搬に台車などの補助機器を使用しているか
  • 重い物を運ぶ際の人員配置や分担ルールがあるか
  • 勤務中に休憩を取れる体制があるか
  • 腰痛がある場合に業務内容を相談できるか

面接では、「重い食材の搬入は、何人でどのように対応していますか」「腰を痛めたスタッフがいる場合、業務内容の調整は可能ですか」などと質問してみましょう。

設備の有無だけでなく、実際の運用方法や対応例も確認すると、働く環境を具体的にイメージできます。

聞いた内容を自分の体調や希望する働き方と照らし合わせ、無理なく働けそうか判断しましょう。

飲食店での腰痛は原因に応じた対策と職場環境の見直しが大切

カップを持つカフェスタッフ

飲食店での腰痛には、長時間の立ち仕事や前かがみの姿勢、重い食材の運搬など、さまざまな要因が関係しています。

腰への負担を減らすには、作業台の高さや重い物の持ち方を見直し、適度に休息を取るなどの対策が必要です。

痛みが強い場合やしびれなどの症状がある場合は、無理に作業を続けず、医療機関を受診してください。

店長や責任者に相談しても改善が見込めず、仕事や日常生活に支障が出ている場合は、別の職場を検討するのもひとつの方法です。

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